
地方で一人暮らしをする80歳の母のために、実家のリビングに見守りカメラを導入したKさん(52歳・男性)。カメラ越しに映る「穏やかな母」の姿にすっかり安心し、次第に帰省の間隔も空いていきました。しかし半年後、久しぶりに実家を訪れたKさんは玄関を開けて絶句します。カメラに映らない「死角」で彼を待ち受けていた光景とは……。節約と親孝行を両立したはずの遠隔介護が招いたまさかの事態を見ていきましょう。
見守りカメラ越しの「穏やかな母」に安心しきっていた息子
「画面に映る母は、いつも通りお茶を飲んでいたんです。それが、まさかあんなことになっていたとは、完全に油断していました……」
都内のメーカーに勤めるKさん(52歳・男性)は、妻と高校生の子どもとの3人暮らし。地方の実家では、数年前に父を見送った80歳の母親が一人で暮らしていました。
母の収入は、父の遺族年金と自身の国民年金を合わせて月に約14万円です。実家の住宅ローンは完済しており、父が遺した預貯金が約1,500万円ありました。贅沢をしなければ暮らしていける金額です。
しかし、80歳を過ぎたあたりから、母に物忘れの症状が見られるようになりました。Kさんは老人ホームへの入居も検討しましたが、入居一時金や月に20万円近くかかる月額費用を考えると、自分の子どもの教育費もあるなかで二の足を踏んでしまいました。
そこでKさんが導入したのが、4,000円ほどで購入できる見守り用のネットワークカメラでした。実家のリビングに設置し、Kさんのスマートフォンからいつでもリアルタイムで映像を確認できるようにしたのです。
「これなら高いお金を払って施設に入れなくても、東京から見守りができる。親孝行と節約を両立できたと思いました」
Kさんは毎晩スマートフォン越しに、母がテレビを見ている姿を確認しては安心していました。カメラがついているという安心感から、以前は2ヵ月に1回は帰っていた実家への帰省も、徐々に間隔が空いていきました。
カメラの死角だった廊下には「大量の段ボール」
異変に気づいたのは、カメラを設置してから半年後。年末年始、久しぶりに実家に帰省し、玄関の扉を開けたKさんは言葉を失いました。
なんと、廊下は未開封の段ボール箱で埋め尽くされ、足の踏み場もない状態だったのです。見守りカメラはリビングに設置していたため、部屋の隅や廊下の様子までは映っていませんでした。
数十万円は下らない最新式のマッサージチェアをはじめ、封も開けられていない高級羽毛布団のセット、高額な美顔器、数万円する高級健康食品のまとめ買い、同じような形の鍋、十数種類に及ぶサプリメントなどが、所狭しと置かれていたのです。
驚いたKさんは母を問い詰めると、悪びれる様子もなくこう答えました。
「電話のお姉さんが、とっても優しくお話を聞いてくれるのよ。『お母様のような特別なお客様だけに』って教えてくれるから、つい買っちゃうの」
一人暮らしの寂しさと加齢による判断力の低下から、母はテレビショッピングのオペレーターと話すことが生きがいになり、「買い物依存」に陥っていたのです。さらに、一度購入した顧客に電話をかけて高額な商品を次々と売りつける「次々販売」の標的にもされていました。
慌てて引き出しから母の通帳を探し出し、記帳した瞬間、Kさんの血の気は一気に引きました。1,500万円あったはずの預貯金は、わずか半年の間に数百万円単位で引き出され、残高は1,000万円を切っていたのです。
「見守りカメラで介護している気になっていただけでした。こんなことになるなら、施設に入れておけば……」
母の老後資金が減ったことで、Kさんの家計にも負担が生じました。節約のための遠隔介護が、結果的に500万円の損失を生むことになってしまいました。
