◆中国の伝統的要素と現代的デザインを融合させた「新中式」

「『残念』『仕方ない』という反応が大多数。政府に文句を言うことができないので、諦めるしかないのです。高市発言から間もない年初には、上海などでは同人的な形で日本のアニメイベントを結構開催していましたが、日本のコスプレの規制は厳格化の流れにあります」
代わりに中国政府が許可・推奨したのが、中国の伝統的要素と現代的デザインを融合させた「新中式」だ。世界的にヒットしたゲーム『原神』のキャラも、伝統歌劇・京劇の衣装をベースにゴスロリ風のフリルを加えるなどモダンなアレンジが施されている。中国のコスプレイヤー・竹子魚さん(女性・25歳)も新中式を楽しむ一人だ。

新中式コスプレは、中国人に受け入れられているようだ。中国経済を専門とする神戸大学の梶谷懐教授は、その背景をこう説明する。
「コロナ禍以降、習近平政権はLGBTQやBL(ボーイズラブ)漫画などを厳しく締め付けてきた。つまり、高市発言の数年前から『逸脱』に対する規制強化は始まっていたのです。そんななかで生まれ、若者にも支持される新中式に政府公認の“正しい”ファッションとしてお墨付きを与えた格好です」
日本の着物や日式(日本の)コスプレは、「逸脱」と見なされたらしい。前出の山谷氏は、こう懸念する。
「’23年の治安管理処罰法草案には、公共の場で中華民族精神を損なう服装を禁じる条文が盛り込まれている。ネット上では日本の着物やコスプレが標的になるのではと『着物禁止法案』『コスプレ封殺法案』などと言われた。実際、和服を着ていた女性コスプレイヤーが連行されたり、アニメイベントで日本語の歌と和服が禁止されました」
◆Z世代に大流行の“漢洋折衷”の新中式

「唐の時代の漢服など、立ち襟(マオカラー)の服やチャイナドレスを現代風にアレンジした新中式ファッションが’21年に登場し、Z世代に大流行して浸透した。街中で新中式の服をまとった姿を撮影した写真や動画をSNSにアップする若者はとても多い。中国のアニメやゲームのキャラも同じような格好をしているので、イベントでもこうしたファッションの若者を多く見かけます」(山谷氏)
‘22年、中国最大級のECサイト・淘宝と天猫が発表した「アパレル業界トレンド白書」で、新中式はトレンド指数第3位に入ると、その後も人気は上昇。市場規模は実に2500億元(約5兆円)との試算もあるほどだ。前出の竹子魚さんは、若者に支持される理由をこう話す。
「漢服は手間がかかるけど、新中式は着るのが簡単で現代人のニーズに合っており、職場や学校でも楽しめる。最近は“漢洋折衷”の新中式も流行ってます。一見、不釣り合いなのに、重ねてみるとカッコいいんですよ」

