◆新中式の真の目的は中華文明の復興!?

「『4つの自信』とは、簡単に言えば、共産党体制を疑うなということ。裏を返せば、それだけ党への信頼が揺らぎ、国民の不満が高まっている。ゼロコロナ政策の失敗や不動産バブルの崩壊で経済が失速したが、中国では共産党は常に正しいので失敗の検証も反省もしない。溜まった国民の不満をガス抜きし、失政から目を逸らすために、新中式で中国人のアイデンティティを持ち出し、ナショナリズムを煽っている。全ては共産党体制の維持のためです」
中国の若者は、新中式に潜む共産党政権の真の目的を知っているのだろうか。前出の山谷氏が話す。
「大多数は新中式が政策の産物とは知らないし、単にカッコいいから着ている。新中式ファッションを着ている動画を投稿する若者にしてもバズりたいだけで、政策を支持する意図があるわけではない」
新中式には「中華民族の偉大なる復興」を目指す習近平の野望も透けて見える。ソフトパワー戦略に新中式を用いて、海外への影響力を強めようというのだ。ただ、梶谷氏の見方は懐疑的だ。
「これまで中国はプロパガンダで外国に影響力を行使しようして、失敗してきた。影響力を及ぼそうとするほど、むしろ逆効果です。そもそも新中式が国策であるか疑問ですが、仮に国策だったとしてもその匂いがすれば、海外で
は人心が離れていくでしょう」
新中式に醸成されたナショナリズムは、どこに向かうのか。矢板氏は、日本への影響を懸念する。
「新中式は中国文化の尊重とともに、他国文化の排斥も意図している。’24年に中国人インフルエンサーが靖国神社に落書きをしたが、こうした迷惑系YouTuberのような犯罪が日本で増える可能性は否定できません」
冷え込んだ日中関係の雪解けは、遠くなりそうだ。
◎プロフィール
中国アジアITジャーナリスト
山谷剛史氏
中国やアジアのITやトレンドを現地人の目線で精力的に取材。近著『異国飯100倍お楽しみマニュアル』(星海社)ほか著書多数
神戸大学教授
梶谷懐氏
専門は現代中国経済(財政・金融)。博士(経済学)。著書に『ピークアウトする中国』(高口康太との共著・文春新書)など
ジャーナリスト
矢板明夫氏
中華民国出身。松下政経塾、産経新聞台北支局長などを経て現職。著書に『習近平の暴発』(共著・産経新聞出版)など
(取材/西谷格 取材・文/齊藤武宏 写真/中国通信)

