◆夫の年収は下がっても、世帯年収はむしろ上がった
とはいえ現実問題、収入なしに生活を続けていくことは難しい。特に子どもがいる場合はなおさらだ。吉岡さんの場合は事前に夫婦で話し合いを重ね、たとえ自身の収入が一時的に減っても、妻の収入があれば最低限の生活には困らないという見通しを立てて退職を決断した。その判断は結果として、家庭全体の収入状況にとっても良い影響を与えたという。「僕がフリーランスに転身した後で妻は転職し、そのときに年収も上がりました。僕自身の年収は下がったものの、トータルの世帯年収で見るとむしろ今は上がっています。僕がサポート役にまわらなければ、妻はそもそも転職もできなかったかもれません。その意味では、あくまで結果論ですが、我々の『作戦勝ち』とも言えるかもしれないですね」
現在は「家事優先」の原則は守りつつも、「助けたい人を助ける」という自身の目指す地点に沿った働き方ができている。「運と縁が重なったこともありますが、自分としてはいまのほうがやりたいことをやれている実感があります」と話す。
会社員からフリーランスへと転身するのも、仕事より家事を優先するのも、男性の選択として決して一般的ではない。それでも自身の目指す地点が明確であったからこそ、吉岡さんは一歩を踏み出し、新たな地平を見出した。「フリーランス」とは単にスタイルに留まらず、固定的な性別役割を見直す働き方でもあるのかもしれない。
【吉岡 茂樹】
大阪教育大学総合学習専攻卒業。大学卒業後、広告代理店にてWEBマーケティング支援に従事。2022年より事業会社にて、企業向け研修のプログラム設計やマーケティングを担当。現在は障がい者雇用事業の立ち上げや特定非営利活動法人の運営支援など、社会課題領域を中心に経営企画・組織開発などの伴走支援を行っている。
<取材・文/松岡瑛理>
―[フリーランスも知らないフリーランスの稼ぎ方]―
【松岡瑛理】
一橋大学大学院社会学研究科修了後、『サンデー毎日』『週刊朝日』などの記者を経て、24年6月より『SPA!』編集部で編集・ライター。 Xアカウント: @osomatu_san

