本棚や本の積まれた場所は、持ち主の思考を映し出しています。暮らしへの眼差しや、生き方。どんな本を通過し、何を手元に残しながら、その人の佇まいは紡がれるのでしょうか。フラワーデザイナー・市村美佳子さんの暮らし、日々を過ごす空間を訪ね、本のある風景を追いかけました。&Premium特別編集「暮らしと生き方の、読書案内」(2024年4月発売号)より、webでも紹介します。
自分の知らない自分に出合う、よりよく生きるための処方箋。

フラワーデザイナー市村美佳子さんは、東京の自宅兼アトリエと葉山の別邸、それぞれに気になっている本を置き、気の向くままに手に取る。小説は、ほぼ読まない。本を読むのは、「イマジネーションで遊ぶのではなく、知りたいことを解き明かすため」。生きづらい世での、処方箋のように。日々をよりよく生きるために、暮らしの傍らには本が必要だという。
愛読するのは、数学者の岡潔や森田真生、そして最近では大学教授の安冨歩の本。岡潔は数学者だが、情緒や自然について書き残したエッセイが多い。岡潔の《小さな一粒の種は、やく半年後の変化までその中に秘めている》(『風蘭』)という言葉には、植物のエネルギーへの思いを膨らませて感動した。森田真生の書は、清潔で健やかな思考が、市村さんにとっての救い。彼の選書がきっかけで、安冨歩の『マイケル・ジャクソンの思想』に引き込まれた。
興味を持つと、同じ作者の本を何冊も読んで少しずつ理解する。社会を知り、違和感や共感の奥を深掘りするうち、自分も知らなかった自分に出合う。「本は触媒のようなものですね。自分の中に種がなければ、反応はしないのだから。そうやって、自分自身を知る手立てなのだと思います」
市村美佳子 MIKAKO ICHIMURAフラワーデザイナー
「緑の居場所デザイン」主宰。「生きるための花」をテーマに、花教室を開催する。不定期で開く「花瓶専門店」では、骨董や現代作家の器を展示販売。様々な価値を往来する独自のセンスは、衣服の創作活動にも広がる。
photo : Kazumasa Harada edit & text : Yuko Mori
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