◆大変だった舞台——変化に気づいてくれた大先輩

前田:実は今こうして話している、この稽古場に、すごい思い入れがあるんです。NODA・MAPのワークショップをやった場所で。私は野田さんとの出会いで本当にハッピーになれた。というか、野田さんに出会うとみんなそうなるんではないかと。演劇の妖精みたいな人なんです。
——しかし、そのNODA・MAPの舞台で、壁にぶつかったということですか?
前田:NODA・MAPってロングランなんです。当時、自分の心身のバランスがわからなくて、肋間神経痛になってしまって。すごく声を張る役だったのですが、ちょっと声を張るだけで、胸がズキッって。
——公演の真っ最中に痛みが出ていたと。
前田:まだまだ続くよ、というような中盤あたりから(苦笑)。すごく不安だったんですけど。私の変化にすぐ気づいてくれた先輩がいて。
——どなたですか?
前田:爪さんです、橋爪功さん。「馬が合うって年齢関係なくあるんだな」と、すごく思った相手です。いつも「お前はバカだ」とか言ってくるんで、「はいはい、私はバカですよ」とか言って、何にも取り繕わなくてもいられる関係で。年齢を超えて、こんなマブダチになれることがあるんだって思いました(笑)。
◆「頑張りすぎなくていいよ」すごい人たちってみんな優しい

前田:その前にも映像で少し一緒になったことがあって、お昼ご飯を一緒に食べるみたいなことはあったんですけど、NODA・MAPはずっと一緒だし、すっごい可愛がってくれて。爪さんのおかげで、みんなともすぐにコミュニケーションを取れました。私よりも全然セリフの量がいっぱいあるのにアドバイスをたくさんくれたりして。
それでその時も、私の変化にすぐ気づいてくれたんです。ずっとステージを横から見てくれていて、ある日突然「ちょっとおいで」と呼ばれて。「もう十分声は出てるし、人には届いているから。敦子のお芝居はもう大丈夫だから、抜くってことをやりなさい」と。
——「抜く」ですか。
前田:この間、その時のことを爪さんに話したら、全然覚えてなかったですけど(笑)。でもそのとき、「頑張りすぎなくていいよ」って言ってくれたんです。
——その言葉で、フッと肩の力が抜けたんですね。精神面からの影響も大きいという肋間神経痛の痛みも取れた?
前田:いえいえ、なくなることはなかったんですけど、付き合い方が変わったというか。「“頑張ってる!”じゃなくてもいいんだ」と思えて、「じゃあ、これくらい抜いてみようかな」といったことができるようになって、そしたら、あっという間に毎日が過ぎていって。重たいものが取れた感じがありました。
——大きな経験になった舞台だったんですね。
前田:野田さんもですけど、みんな優しいんですよ。「すごい人たちって優しいんだ」と。いろんな心の葛藤もだし、調整みたいなものをそのときに学びました。長い舞台って、こんなにいろんなことを学べるんだって。特にプロフェッショナルな人たちが集まっている大きな舞台で、大人になって改めて勉強になりました。30歳の誕生日もこの舞台中に迎えたんです。

