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多くの企業が新入社員を迎え入れる春。新卒はもちろん、転職してきた人たちで職場の空気は一変する。とはいえ、せっかく就職したにもかかわらず、すぐに退職してしまう人もいる。業務内容や職場環境が合わなかったなど、人によって理由はさまざまである。

◆「行動力がスゴい」新入社員に、周囲は“なんでうちに入社したんだろう?”

大手保険グループの子会社で働く角刈りにメガネの男性、浅野洋介さん(仮名・30代)が同期だった加藤さん(仮名)の第一印象についてこう話す。
「誰もが“なんでうちに入社したんだろう?”と思っていました。彼は東京都内の有名私大を出ていて、親会社にも就職できそうなのに。同期はほとんど中堅以下の大学だし、勉強もスポーツも“そこそこ頑張る”みたいな。加藤は、そんななかでも海外留学していたり、ボランティアにもたくさん参加してきたような行動力とかバイタリティーあふれるタイプで。うちの仕事は地味なうえに大変だから、満足できるのかなって」
とはいえ、入社後の研修においても「とにかくアイツは優秀だった」と振り返る。
◆研修を通して深まる同期の仲
同期には、女性も少なくなかったという。「一般常識やビジネスマナー、グループワークなどの研修が合同で行われました。加藤は率先してまわりを引っ張っていく。泊まり込みの研修では難しい課題で追い込まれるのですが、内容についてこれない人には気配りしながら、自分自身はだれよりも頑張るという。そういう姿勢は純粋にすごいと思いました。女の子たちから頼りにされていて、加藤がプレゼンする際にキャーキャー騒いでいる子もいましたから。正直、羨ましいなって……少し僻みが入ってすいません(笑)」
同期の仲は研修を通して深まり、金曜日の夜になれば飲み会、土日もボウリングやカラオケ、ドライブに出かけるなどしていたそうだ。
「みんな学校を卒業したばかりなので、サークルのノリを少し引きずっていたんですよ。近いうちに“同期でカップルができるかもな”と予感していましたね」

