◆政治家時代の言動を有耶無耶にしていいのか

石丸氏が安芸高田市長だった2022年。今に続く違和感を決定づける出来事が起きました。
議場で居眠りをしていた議員(当時)に向かって、「恥を知れ! 恥を」と叱責したところ、その議員の妻が自殺してしまったという一件がありました。その議員は睡眠時無呼吸症候群から軽度の脳梗塞を患っていたとの診断書を提出したものの、その後も石丸氏から非難され続けました。結果、議員は嫌がらせ電話や、注文していない品物が着払いで届くなどの被害にあったといいます。
病状の悪化した議員が亡くなり、その後に妻が自殺したという経緯です。(『デイリー新潮』 2025年3月12日)
このことについて2025年の記者会見で問われると、以下のように語っています。
<一般的な話をします。自殺というものは故人においては悲しい出来事であり、社会において忌むべき事象です。>
そして、議員に対して行ったことは、誹謗中傷ではなく批判だったと説明するのです。
<前提の認識をそろえておきたい。公人というものは批判を受ける対象となると思います。私人ではないので。一般の方とは違うので。ただし、誹謗中傷はいけない。当たり前です。>、<その観点で、私が行ったのは批判です。> (『日刊スポーツ』 2025年3月14日)
◆深刻な問題と下世話な娯楽が「地続き」である恐ろしさ
ここでは、実際に議員を批判したのか、誹謗中傷したのかを問いたいのではありません。議員の妻の自死と、彼の言動に直接的な因果関係があるかどうかを証明したいのでもありません。問題は、人の生死や尊厳に関わる話をしているときと、『恋愛病院』で「本当の恋愛」について屁理屈をこね回して笑いものになるロジックの土台にあるものが、全く同じだということなのです。究極に深刻な話と、とことん下世話な娯楽が、だらしなく混ざり合っている。この不穏なリアリティが、『恋愛病院』に石丸伸二氏が出演することの最大の違和感なのです。
つまり、このオモチャは出荷前に検品されたのか、という強い疑問です。
『恋愛病院』は、面白い。それは間違いない。
しかし、その面白さは、殺伐とした乾きによって成り立っているのです。
文/石黒隆之
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。X: @TakayukiIshigu4

