◆消費の間隙に取り残された百貨店ビジネス
百貨店ビジネスはすでに明暗が分かれています。インフレの進行によって国内の消費動向は二極化が進んだためです。三越や伊勢丹のように外商部が強い百貨店は堅調を維持している一方、西武百貨店のような電鉄系は苦戦する会社が目立つようになりました。電鉄系の百貨店は一億総中流を支えた小売業の形態。衣料品に強みを持っていたものの、大衆向けのファストファッションの台頭と、富裕層のハイブランド化が進行したことで、消費の空白地帯に取り残されました。この現象は総合スーパーが苦戦する様子とよく似ています。
西武渋谷店は閉鎖することが決まり、池袋本店の売場の約半分はヨドバシカメラになりました。2023年1月には東急百貨店本店が閉鎖。一等地にあったとしても、中間層向けの総合小売業は力を失っているのです。足元の生き残り策は富裕層と外国人観光客の消費の受け皿へと移行すること。しかし、富裕層に恵まれているわけでもなく、インバウンド消費に期待できない地方都市も数多く存在します。そのような場所にある百貨店は苦戦が続くでしょう。
難しいのは、地方では再開発も進みづらいこと。新潟三越の跡地の再開発プロジェクトは、計画通りに進めるための施工業者が見つからずに遅れています。当初の計画から規模を一部縮小する変更案なども検討されていますが、具体的な案は固まっていません。オフィスや住宅、商業の複合施設を作るにしても、建設コストの高騰で採算がとれる見込みが薄くなっているようです。百貨店の在り方と閉鎖後の跡地利用は、中長期的な社会問題となるかもしれません。
<TEXT/不破聡>
【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界

