◆「課金がやめられない」親の不安と承認欲求
――先の見えないゴールに向けて、課金が続いていく背景には、どのようなものがあると思いますか。島田:均質化みたいなものはあるのかなと思います。高学歴で高収入、社会的地位も高い人たちが集まる環境に長くいると、その中の基準や価値観に引っ張られていくというか。
気づかないうちに、プライドとか見栄の張り合いになっていく部分はあると思います。自分が高学歴だと、子どもにも同じレベルを求めてしまうし、逆に、自分の中の学歴コンプレックスを子どもで埋めようとするケースもあるでしょうし。
妻は前者で、熱が入りすぎてモンスターペアレンツ化していました。塾に頻繁に電話したり、面談を求めては、「成績が上がらないのは、先生の指導に問題があるのでは」と言ったりしていました。問題なのは、子どもの学ぶ姿勢のはずなのに……。
――奥様は、学校など他の場所に対しても同じように主張されることはあったのでしょうか。
島田:受験前までは、そこまでではなかったと思います。学校に対して強く要望を出すようなこともなかったですし。ただ、中学受験を始めてから、完全にスイッチが入った感じで。
本来は子どもの受験のはずなのに、だんだん“自分の戦い”のようになっていったように見えました。共依存とまではいかないかもしれませんが、同一化している感じというか。
だから、第一志望校に入れなかったことにも、すごく悔しがっていましたし、「クラスの〇〇君はどこに合格したのか」と、知り合いの子どもたちの進学校を息子から聞き出している様子を見ていると、妻にとってもこの受験は“自分が参加している競争”だったんだろうな、と。
息子が勝つことで、自分も満たされたい、みたいな。これ以上、妻の承認欲求を満たすためのレースに巻き込まれるのは、もうしんどいですね。
◆コスパ悪い課金ゲームに参加する意義
――高校授業料無償化が注目される中で、中学から私立という選択肢への関心も高まりそうです。これから中学受験を考える保護者に、どのようなことを伝えたいですか。島田:中学受験をコスパで考えると、決して良いとは言えないと思います。なので、その“コスパが悪い課金ゲーム”にあえて参加する意義があるのかを、始める前に考えた方がいいんじゃないかと。
それと、やってみて思ったのは、親が同じ温度感で前のめりになると、子どもは潰れるということです。どちらかが強く関与するなら、もう一方は引いた位置で見て、フォローに回るくらいがちょうどいいのかもしれません。
とはいえ、中学受験はある程度の経済力がなければ難しい。うちは世帯年収2000万円超ですが、それでも余裕はありません。お金を稼ぎながら、全体を冷静に見る役割の人間が、家庭内に一人は必要だと思います。ただ、それを両立するのは本当に大変で、気づいたら親の方が追い詰められている、ということも普通にある。なので、息抜きの時間を作ることも大事だと思います。
何より、中学受験の結果で子どもの人生が決まるわけではない。その前提だけは、最後まで忘れないほうがいいと思います。
<取材・文/秋山志緒>
【秋山志緒】
大阪府出身。外資系金融機関で広報業務に従事した後に、フリーのライター・編集者として独立。マネー分野を得意としながらも、ライフやエンタメなど幅広く執筆中。ファイナンシャルプランナー(AFP)。X(旧Twitter):@COstyle

