◆艶っぽいシーンを美しい等身大人形で再現
左手の桟敷。桟敷手前には太鼓を叩いていたり、乱闘シーンもある舞台では歌舞音曲に合わせ、左右の袖から人形が登場。有名な歌舞伎の演目の「連獅子」「新口村」「二人道成寺」のシーンを再現……といっても人形自体は静止状態でレールの上を移動するだけ。
観覧席の背後には、1階部分に楽屋と小部屋、2階には石川五右衛門が「絶景かな、絶景かな」と見得を切っているだが、最後の「石川五右衛門」では2階部分に舞台があり、石川五右衛門がしっかりと動き、見得を切る。観覧席の背面の1階部分は楽屋があり、台本を前に打ち合わせする人形も。その楽屋を2つの小部屋が挟んでいるのだが、どちらも薄い布越しに内部が見える。
楽屋の隣りの小部屋には、薄い布越しに半裸の女性がくつろいでいるのが見える左側の部屋には上半身を露わにした女性とその肩を揉む男性、右側の部屋は入浴中の全裸の女性が2人。1人は男性の前に立ち、身体検査でもされているような状況だ。まさか、江戸時代の艶っぽいシーンまでが美しい等身大人形で再現されていようとは。
実は当館の向かいには、かつて紫峰人形美術館(1981〜2017)というバブリーな美術館があった。『ワンダーJAPAN(4)』でも紹介しているが、大音量のBGMが流れるなか500体以上もの人形(こちらは小さめなものがメイン)が動き回っていて、その姿はいまもYouTubeで確認できる。
それに比べると、高浜茶屋 吉貴はちょっと地味かもしれない。だが、地味な中にもジワジワとくる奇妙な感じ、ここはまさに異空間だと思う。
<TEXT/関口勇>>
【関口勇】
『ワンダーJAPON』編集長(フリーランス・発行元はスタンダーズ)。廃墟、B級スポット、巨大構造物、赤線跡などフツーじゃない場所ばかり紹介。武蔵野美術大学非常勤講師。X(旧Twitter):@isamu_WJ