◆■ 数字が語る「マナー問題」と私たちができること
公共の場での譲り合いが、一人の身勝手な振る舞いで踏みにじられてしまう。そんな車内の光景は、今の時代、決して他人事ではありません。①年々深刻化する「ニオイ」と不動の「座り方」問題
日本民営鉄道協会の過去の調査を振り返ると、車内マナーに対する人々の意識の変化と、変わらない根深さが見えてきます。
今回のエピソードにある「座席の座り方」は、まさにマナー問題の「本丸」です。過去のデータを見ると、2021年度(2位・37.4%)、2022年度(1位・34.3%)、2023年度(1位・37.1%)、2024年度(2位・31.9%)、そして最新の2025年度(2位・31.9%)と、5年以上にわたり常にトップ2以内を独占しています。これほど多くの人が、長年「詰めない・足を伸ばす」といった行為にストレスを感じ続けているのです。
一方で、肉まんのような「強い香り(ニオイ)」への意識は近年急激に高まっています。2021年度にはトップ10圏外だったこの項目ですが、2023年度に7位(17.0%)、2024年度には4位(26.3%)と急上昇しました。以前は「飲食」というマナーの枠内で語られていた問題が、今や周囲の空間を侵食する「香り(ニオイ)」の問題として、より厳しく捉えられるようになっていることがわかります。
②殺伐とした車内を「ちょっとした余裕」で乗り切る
今回のエピソードで、足を広げて座席を独占していた男性が、大柄な外国人に挟まれて縮こまった姿は、どこかシュールで「明日は我が身」と思わせる教訓を含んでいました。
誰もが仕事で疲れ果て、心に余裕をなくしがちな現代社会。満員電車という過酷な空間にいれば、つい「自分くらいは楽をしたい」という気持ちが芽生えてしまうのも、ある意味では人間らしい本音かもしれません。
すべてをルールで縛り、お互いを監視し合うのは息苦しいものです。だからこそ、ほんの少しだけ「隣の人も自分と同じように疲れているんだな」と想像してみる。そのささやかな思いやりが、殺伐とした車内の空気をふっと軽くしてくれるはずです。
ストレスの多い毎日ですが、ほんの少しだけ、隣の人の疲れを想像してみる。そのささやかな配慮が連鎖して、殺伐とした車内がふっと和らぐ瞬間。そんな少しだけ優しい光景が、明日からの通勤路のどこかに、そっと広がっていることを願っています。
<取材・文/chimi86 再構成/日刊SPA!編集部>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

