

京都で和菓子を制作する〈御菓子丸〉が、四季折々の寺社仏閣の風景を、独創的な菓子と文とで表現。京都の風景に思いを馳せたくなる、美しい一皿を紹介します。

京都・山科にある真言宗大本山・隨心院。この寺は、もともと平安時代前期9世紀頃の女流歌人・小野小町の屋敷跡と伝えられる。梅園には山紅梅、白梅、薄紅梅と、色とりどりの約200本もの梅の木が植えられており、花々とともに春の陽気を知らせるのが、毎年3月末に開催される伝統行事「はねず踊り」だ。
小野小町を慕って百夜通いをした深草少将。その伝説に節をつけた唄にあわせ、少女が紅梅を花笠にして舞い踊る。はねずは朱華とも書き、庭梅またはザクロの花の古名とされる、白みを帯びた薄い紅色。儚さの象徴としてもたとえられ、天武天皇や持統天皇の頃は親王の衣装の色とされ最高位を示したという。はねず色の着物を着た少女たちの舞は、梅が咲き誇るあたたかな春の光の中で、より一層晴れやかに観客の心に映る。
この陽気な春の風景をお菓子に込めるように作った「はねずもち」。着物の色を外郎生地に写し、着物のかたちに成形、中には梅の香りの餡を忍ばせた。見た目にも味わいにも、お菓子を通して晴れやかなはねず色を楽しんでいただけますように。
はねず踊りは3月最終日曜開催。
『隨心院』京都市山科区小野御霊町35 075−571−0025 拝観9時〜17時(16時30分受付終了)無休 拝観料500円
photo : Yoshiko Watanabe
*『アンドプレミアム』2025年5月号より。
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和菓子作家 杉山早陽子
1983年三重県生まれ。老舗和菓子店での修業を経て、2006年から和菓子ユニット〈日菓〉として活躍。2014年から〈御菓子丸〉を主宰している。

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