◆感情オンリーでまくし立てるのはNG
もう一人、現在の与党では小泉進次郎防衛大臣もマスメディアやSNSで度々注目される存在だ。小泉氏といえば、以前は同じ内容を何度も繰り返すような独特の話し方が、一部では「進次郎構文」などと揶揄されてもいた。しかし2025年10月に高市内閣で防衛大臣となって以降は雰囲気が一変。国会や記者会見でスマートかつ的確な答弁を行い、評価が急上昇している。「役割がハマったのでしょうか、覚醒されてスゴイですよね。農水大臣の頃は言葉が表面的でフワッとなっていた面もありましたけど、防衛大臣のポストが『日本防衛』という明確な目標となり、小泉さんの理念や背景にも上手くハマったのでしょう。このように現状の目標や使命、将来ビジョンを自身が明確に感じることは、スピーチに厚みや説得力を持たせるうえで非常に重要です」
また、渡邉代表はスピーチのコツとして「感情を感じながらもそれを冷静に扱って話す」ことの大事さを強く訴えた。
「繰り返しお話したように、スピーチでは自分のスタンスを明確にしつつ、聴衆と良いコミュニケーションをとれることが重要な時代になってきました。例えば、よくあるNGなパターンとして、感情が強すぎて声が荒くなったり、相手を否定したり、話が飛んでしまう人がいますけど、これは、共感ではなく逆に『圧』になってしまいます。一方、冷静すぎる話し方も良くなくて、棒読みになったり、正論を言っているだけだと、理解はされても、人のこころが動くことはないんですよね」
「なので、伝えるぞ!と前のめりになるよりも、このあたり自分で俯瞰的にチェックできるようになるのがポイントです。ですが一番重要なのは、感情を抑えることではなく、自分で感情を自分の感情を扱えるようになるということなんです。ここがなかなか難しいところですが、感情を消すと魅力がなくなってしまうし、感情だけだと信頼がなくなる」
「欲しいのは、感情を出しすぎた言葉でも、抑えすぎた言葉でもない。最終的に、『効果的な話し方』とは、感情を感じながらもそれを冷静に扱っている状態。つまり『自分の感情を理解し、制御し、相手に届く形にして届けるスキル』と言えるんじゃないでしょうか」
◆己を知り、相手に知ってもらおうとする事が…
最後に、より具体的なスピーチの練習方法として、渡邉代表は16タイプなど活用した自己分析を提案している。これは心理学者カール・グスタフ・ユングの著書『心理学的類型』(1921年)に由来し、人間の心のクセを「思考型」「感情型」「直感型」などの組み合わせで合計16通りに類型化するものだ。「若い方々の間では血液型のように自分のタイプを言うことができます。きっかけは韓国のアイドルグループが『僕はあのタイプだよ』と発言して、そのアイドルを推しているファンの子達の間から広まったようです。他人の性格を勝手に類型で決めつけてしまう事は、かえって偏見や誤解の原因となりかねないので推奨されません。しかし、自分で自分の性格を「傾向」として振り返ってみて、自分の強みに自信を持ったり、その反面の苦手部分の対処方法を検討することで、話法や思考の練習をするのは有効です」
「16タイプなど様々な機会で自分を知り、自分が何者で何を目指しているのかを定めようとする努力は、相手と冷静かつ効果的に話し合わなければならない人にはとても大切ですね。また、話し手側の目的がどこにあるのか、本音を伝えているか、偽りがないかなどは、意識すれば伝わるものだと思います」
日々激しく変動する国内外の情勢をうけて、国会の政治家達は自身の政策や主張を国民に伝えるべく、様々な取り組みを行うべき立場である。そこで背負っている責任は高市首相のみならず、与党議員でも野党議員でも変わらないはずだ。彼らの有り様を見て、私たち自身も「本当に相手へ気持ちを伝えられているか?」「相手からちゃんと共感されているか?」「熱心に説明しているつもりで、ただの一方通行になってないか?」などと、反省すべき点は多いのかも知れない。
<取材・文/デヤブロウ>
【デヤブロウ】
東京都在住。2024年にフリーランスとして独立し、ライター業およびイラスト業で活動中。ライターとしては「Yahoo!ニュース」「macaroni」「All Aboutニュース」などの媒体で、東京都内の飲食店・美術館・博物館・イベント・ほか見所の紹介記事を執筆。プライベートでも都内歩きが趣味で、とりわけ週2〜3回の銭湯&サウナ通いが心のオアシス。好きなエリアは浅草〜上野近辺、池袋周辺、中野〜高円寺辺りなど。X(旧Twitter):@Dejavu_Raw

