
◆必要になった時、介護サービスはもうない?
医療・介護の業界は、高齢化によって今後も需要が増え続けるため、成長市場のように感じる。しかし、今年4月に東京商工リサーチが驚きの調査結果を発表した。なんと、2024年度は介護事業者の倒産が過去最多となったというのだ。調査結果によれば、2024年度の介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産件数は179件で、前年度に比べて36.6%増だという。今後も高齢者が増えるのに倒産が増え続ければ、現役世代が将来的に介護が必要になってもサービスが受けられない未来がくるかもしれない。自身の介護の前に、親の介護の問題が発生するのは言うまでもない。
ここまで倒産が相次いだ背景には様々な要因が複合しており、介護報酬の引き下げや、物価高騰にともなう運営コストの上昇、コロナ禍のダメージの継続などもあるという。ただ、やはり人手不足の問題は大きい。介護現場の深刻な人手不足は、民間事業者の倒産だけでなく、自治体のサービスにも影を落とし始めている。
厚生労働省は人員確保が困難であることを理由に、地方の市町村の介護や児童福祉、障害福祉、生活困窮者支援などの福祉の窓口を特例制度を設けて一本化することを検討しているという。同じく人員確保の難しさから、市町村が設置する地域包括支援センターの人員配置基準を緩和するも実施済みだ。
このように、法律で定められた介護の有資格者の必要人数などを特例で緩和すれば、人手不足でもサービスの継続が法律違反になることは避けられる。ただ、職員数が減るということは、一人の職員が対応する利用者数や仕事量が増えるということ。職員の負担が増す可能性もあるし、利用者の立場でもサービスの質が落ちる不安が出る。
職員の減少から職員一人あたりの負担の増加、人間関係の悪化が起きれば、さらなる離職増や新規採用が難しくなる負のループへとつながる。そんな懸念が民間だけでなく自治体でも出てきているのだ。
◆サービス不足で「介護離職待ったなし」
このように、介護のサービスは最前線の現場や地方において特に、人手不足から非常に厳しい状況となっている。今年は団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」が表面化しており、さらに65歳以上の高齢者が人口の35%を占める「2040年問題」も控えている。現役世代が老後を迎えて介護が必要になった時、十分な介護サービスを受けられるのか不安になるが、それよりも目前の問題として、親世代が介護サービスを受けられない懸念すら出ている。親を受け入れてくれる介護サービスがなく、子が親の介護を一手に引き受けなければならなくなると「介護離職が待ったなし」となることも多い。
介護離職まで至らなくとも、親の介護に振り回される人は、私たちがシニア転職支援を提供する中でもかなりの頻度で見られるため、その一部を紹介しよう。

