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妻に内緒でつぎ込んだ〈退職金1,500万円〉…64歳男性「定年後の夢」が、11ヵ月後に“年金”まで食い潰す「悪夢」と化したワケ【FPが解説】

妻に内緒でつぎ込んだ〈退職金1,500万円〉…64歳男性「定年後の夢」が、11ヵ月後に“年金”まで食い潰す「悪夢」と化したワケ【FPが解説】

定年退職後に夢を追うことは、セカンドライフの大きな生きがいとなります。その実現のため、まとまった資金として「退職金」を元手にするケースも少なくありません。しかし、その挑戦が儚く散る人も。なかには将来の年金収入にまで、深刻な影響をおよぼすことがあって……。本記事では、Aさんの事例とともに、シニア起業の注意点について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。

定年後の自分

人生100年時代、60歳定年はまだ折り返しを過ぎたあたりです。生涯現役を目指すなら、あと40年あります。高年齢者雇用安定法により、希望すれば65歳までの雇用機会の確保が企業に義務付けられ、さらに70歳までの就業も現実的な選択肢となりました。収入のため、あるいは社会との繋がりのため、定年後もセカンドキャリアを歩む人は年々増えています。

中堅企業で営業として定年まで勤め上げたAさんも、その一人。20代から40代まではがむしゃらに働き、確かな人脈とスキルを身につけてきました。教育費の支払いや住宅ローンを返済するため、共働きの妻と二人三脚で頑張ってきたのです。

50代になると、定年後の自分を考えると想像ができず、「このまま衰えて年金生活になり、人生を終えるのだろうか」と考えることもしばしば……。そんなAさんはふと、学生のころの「夢」を思い出します。

学生時代、プロ野球選手を夢見て白球を追いかけていたAさん。しかし、ケガによってその夢は断たれてしまいます。それでも「野球に携わる仕事がしたい」という想いは消えず、新卒でスポーツ販売店の営業職に就職。形は違えど、スポーツに関わる道を選んだのでした。

Aさんは、仕事を通じて知り合った野球仲間と草野球チームを結成しました。休日に汗を流すのも楽しみでしたが、それ以上に、練習後の反省会や懇親会が、彼にとって最高の時間となっていきました。気の合う仲間と野球の話に熱中できる、なによりの楽しみです。

ある日、草野球仲間のBさんから、練習後いつも利用している喫茶店が閉店することを聞かされます。唯一の楽しみがなくなることを残念に思ったAさん。そのとき、電流が走りました。

「そうだ、自分が起業すればいい」

定年後の「夢」と、妻に隠した“決意”

ずっと同じ会社で働いてきたため、中堅会社といえど、退職金は1,500万円と潤沢です。ネットで定年後の起業による失敗談などをみたことで、少し怖くなりました。しかし、無理な借り入れをせず、退職金の範囲でまかなえば大丈夫だろうと、妻に内緒で「野球好きが集う喫茶店」の開店を決意。妻には「草野球仲間のお店を手伝う」とだけ伝え、開店準備に入ります。

初期費用を節約するため、閉店した喫茶店の備品を安く譲ってもらい、内装には野球観戦用の大型テレビを設置。開店当初は、野球仲間や会社の元同僚が訪れ、店は賑わいをみせました。

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