本当にイライラする!…息子の教育方針をめぐってすれ違う夫婦
「もう、あなたといると本当にイライラする!」
早川歩美さん(仮名・50歳)は、夫の雄介さん(仮名・47歳)に声を荒げました。
(ああ、またいつもの小言が始まったか……。こういうときはヘタに反論しないほうがいいな)
雄介さんが黙ってやり過ごそうとすると、歩美さんはさらにヒートアップ。ありとあらゆる罵詈雑言を浴びせかけます。
今日の喧嘩の発端は、ひとり息子の大成くん(仮名・16歳)のこと。いわゆる “教育ママ”である歩美さんは、「いい大学に行ってほしい」と、高校に入学したばかりの息子を予備校に入れたいと考えています。
しかし、夫の雄介さんは反対の立場。というのも、息子がぼそっと「高校に入ったら、弓道部に入りたい」と言うのを耳にしていたからです。
ある夜、「大成をX予備校に通わせたいんだけど、いいよね?」という歩美さんに、「大成の意向を聞いてからにすれば?」と言ったところ、歩美さんの逆鱗に触れてしまった様子。「どうしてあなたはいつも私の考えを否定するの?」と声を荒げます。
これまでも2人は教育方針の違いから、何十回、何百回と同様の喧嘩を繰り返してきました。
幼いときから、大成くんは歩美さんの意向で、水泳やリトミック、ピアノ、英語、公文とさまざまな習い事をかけ持ちしていたそうです。
雄介さんはたびたび、「ちょっと詰め込みすぎじゃない? 休みもなくてしんどそうだよ。お金もばかにならないし、少し減らしてもいいんじゃない」と提案してきましたが、歩美さんはまったく聞き入れません。
「信じられない……なに言ってるの? すべては大成の将来のためよ。これからいろんな可能性が広がる大事な時期なのに。あなたは親としての自覚が足りないのよ」
出産を機に専業主婦へ…以来“子育て”に熱中する妻
出産を機に専業主婦になった歩美さん。もともと上昇志向の強い彼女は、周囲のママ友の影響もあってか、子育てに一生懸命になりすぎてしまっているようです。
「子どもにいい教育を受けさせることが、親としての責務なの」
妻の不満が限界突破…“放任主義”の夫に「離婚宣言」
そう語る歩美さんに対し、息子が振り回されているのではと心配しながらも、雄介さんはこれまで、できるだけ妻の意向に沿うよう努めてきました。彼女の神経を逆なでしないよう、慎重に振る舞ってきたのです。
しかし歩美さんからすると、雄介さんは「自分の意見を持たない人」「子どもに対して無関心な放任主義」としか映っていませんでした。雄介さんはただ、子どもの気持ちを尊重し、のびのびと育てたいと願っているだけなのですが……。
「もういい! 大成のことを真剣に考えない父親なら、いないほうがマシよ!」
ある日、歩美さんは雄介さんに宣言しました。
「離婚しましょう。これからは大成と2人で暮らします。ただし、ただで離婚するわけにはいきません。生活費と養育費はきちんといただきますからね」
大声をあげる妻に、反論するすべはありません。雄介さんは、妻の宣言を受け入れることにしました。しかし、内心モヤモヤが残ります。
(養育費はわかるけど……なぜ別れた妻の生活費まで?)
しかし、妻の機嫌を損ねるわけにはいきませんから黙るしかありません。
すると、しんとしたリビングに、2階の子ども部屋から大成くんがやってきました。
「母さん、興奮するなよ。勉強してたのに、こっちの部屋まで丸聞こえで集中できないんだけど」
「あら……大成ごめんねえ。ねえ大成、こんな家出て行って、今日からママと暮らしましょう。ママ、離婚するから。い~い?」
「別に。勝手に離婚すれば? だけど、俺は父さんと暮らすから」
思いがけない返答に、歩美さんは言葉を失いました。しばらく沈黙したあと、「……はぁ? お父さんはあなたのことなんて、なにも考えてないのよ」とようやく口を開くと、大成くんは我慢ならない様子で、これまで胸に溜めてきた思いを語り始めました。
「あのさあ、いい加減にしてよ。なんにも考えてないのはどっちだよ! ずっと我慢してきたけど、母さんが俺の意見を聞いてくれたことなんて一度もないだろ……。俺のため俺のためっていうけど、結局は“自慢の息子”をつくることしか頭にないんだろ? 父さんがいなかったら、とっくに爆発してる。母さんは1人で暮らせばいいよ。そのほうが俺も父さんも幸せだから」
最愛の息子の“本音”を知った歩美さんは、あまりのショックに思わず号泣。
冷たい視線を向ける息子に対して「全部アナタのためだったのに……!」と吐き捨て、自室にこもってしまいました。
