
従業員に給料を過払いしてしまった場合、支払い先の従業員がすでにそのお金を使ってしまっていても、会社は返還を求めることができるのでしょうか。こうしたトラブルを迅速かつ適切に解決するためには、法律に基づいた正しい手続や対応方法を理解しておくことが重要です。実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」ココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、過払い給料の返還について、細井大輔弁護士が解説します。
自営業の飲食店…経営が悪化するなか、致命的ミスが発覚
相談者は飲食店を営んでいますが、先日、退職した従業員の給料として一桁多い金額(約40万円)を振り込んでしまいました。すぐに振込元の銀行に相談しましたが、本人と交渉するよう勧められました。そこで、相談者は元従業員に連絡したものの、電話に出てくれず、LINEにも一切返信がありません。
相談者は「経営が悪化しているにもかかわらず、泣き寝入りするしかないのか」と、頭を抱えています。
そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の3点について相談しました。
(1)そもそも誤って振り込んでしまった給料の返還を求めることはできるのか。
(2)元従業員が返還に応じない場合、相談者はどのような手段を取ったらよいのか。
(3)元従業員が給料を使ってしまい、お金がないと主張された場合、どのように返還を求めることができるのか。
誤振込は「不当利得」として法的に返還請求できる
まず、誤って支払ってしまった給与は、雇用契約に基づく正当な支払いではありません。したがって、民法703条の「不当利得返還請求」の対象となります。
不当利得とは、法律上の原因がないのに他人の財産によって利益を得て、相手方に損失を与えた場合、その利益を返還しなければならないというルールです。
今回のケースでは、元従業員が「受益者」、飲食店経営者が「損失者」にあたり、誤振込により元従業員が法律上の原因なく利益を得ています。このため、経営者は「不当利得返還請求権」に基づき、返還を求めることができます。
金額が多額である場合、返還を求めないままにしておくと、経営に大きな悪影響をおよぼします。従業員が「もう退職したから関係ない」と考えていても、法的には返還義務を免れることはできません。
