◆「自分で自分に限界を設けるのはやめようと思った」

折原みと(以下、折原):私、何年かに一回新しいことが始めたくなる人なんです。今年(’25年)はちょうど、その波が来ていたんですね。
今までは自分の作品を通じてメッセージを伝えるスタイルでしたが、今年はデビュー40周年の節目だったこともあり、「60代バツなしおひとりさま」という生き方を軸にした発信の仕方ができるんじゃないかと、ふと思ったんです。
自分と同じように「おひとりさま」で、かつ将来を不安に感じているような女性に向け、「自分は60代のおひとりさまだけど、すごく楽しく生きているよ」というメッセージを発信することで、そういう方たちに、楽な気持ちになってほしいという意図がありました。

折原:一種の開き直りですね。自分が若い頃は、「60代=おばあちゃん」というイメージを抱いていました。ただ、いざ還暦を迎えてみると、それまでの生活と何が変わったというわけでもなかった。だとしたら「60代だからこれができない」と決めつけたり、自分で自分に限界を設けるのはやめようと思ったんです。
◆「早く結婚すれば?」は、数えきれないぐらい言われた

折原:そうですね。もともと映画監督になりたくて東京に出てきました。エキストラのバイトをしていたんですが、それだけじゃ食べて行けなくて、雑誌でイラストを描く仕事をしていたんです。1カットあたり数千円でしたが、数をこなせば食べていく分には困りませんでした。
ある時、イラストを担当した小説の原作を読んでいたら、自分にも書けそうな気がしたんです。編集さんに相談したところ、「試しに書いてみては」と言われたことをきっかけに、小説執筆も手がけるようになりました。
漫画の仕事だと、締切間際にアシスタントさんを呼んで最後の仕上げをみんなで一緒にやったりしますが、小説の場合は自分一人で作品に没頭できる。どちらも違う楽しさがあって、片方に絞ることは考えられませんでしたね。
ーー20代の時は、結婚へのご興味はお持ちでしたか?
折原:興味はありましたが、20代なので本気度は低かったですね。それよりは仕事が本当に忙しくてそれどころではない、という感じでした。
ーー少女漫画の仕事は異性と出会う機会が少なそうなイメージがありますが、実際はどうですか。
折原:同世代の同業者では結婚していない方も多く、していても担当編集、というケースも多かったです。忙しすぎて出会いがないし、仕事のことを理解してもらえるからでしょうね。
自分の場合は30代に入り、やっと「そろそろ結婚せねば」という考えが出てきて、知人にちょくちょく異性を紹介してもらったりしていました。でも、ピンと来るような相手はなかなか見つかりませんでした。
ーー先生が20~30代の頃(1980~90年代)は、世代的にまだ結婚の「圧」が強かったのではと想像します。
折原:「早く結婚すれば?」と軽口を叩かれることは、数えきれないくらいたくさんありました。今のご時世、こんな発言を職場でしたらきっとアウトだと思います。ただ当時はそういった言葉をプレッシャーに感じていたというよりは、「うざいな」と思って聞き流していた感じでした(笑)。

