絵本の中の世界を、機能的にデザイン。


広い敷地に建てられた東京郊外にある古い団地。ある一室の扉を開けると、「物語」を愛する人のアイデンティティを感じる、創意溢れる空間が広がっていた。家主は編集者の川端麻里子さん。娘と猫3匹との暮らしだという。丸ごとリノベーションした空間には、印象的な〝ユニークな仕掛け〞が2つある。
ひとつは壁一面の本棚。玄関から右が母の棚、左は娘の棚という区分でその真ん中に、うさぎが眠る、ファンタジックな緑の部屋が描かれた可動式の壁が配置されている。
「マーガレット・ワイズ・ブラウン作の『おやすみなさい おつきさま』という絵本が昔から大好きで。友人にすまあみというウォールペインターがいて、彼女と私、それぞれの子どもたちと作中のあるシーンを模して描きました」
棚全体の寸法は、床のグリッドを基準にデザインされていて、空間に心地よい統一感を生み出している。もうひとつの仕掛けは、中央に鎮座する「スリーピングボックス」だ。
「寝床以外に、ベンチ、靴箱、収納、猫の通り道などいろいろな機能を取り込んだ箱を作ってもらいました」
着想のきっかけを尋ねると、「『ドラえもん』ですかね」と微笑みながら語ってくれた。
「子どもの頃押し入れで寝るのに憧れてました。下が私のスペースなのですが、このおこもり感が心地よいんです。家のプランニングをしていたときは、娘は小学3年生。彼女は『自分の部屋はいらない』と言っていたけど、成長したら絶対、自分の部屋は欲しくなるだろう、と。とても小さなスペースですが、せめて2段ベッドにして個別の空間を作ってあげようと思ったわけです」
ボックス家具は、スウェーデンの暮らしに根付いている。
「暖かく過ごすために、あえて部屋を狭くして寝床と収納などマルチな機能を兼ね備えたボックスを利用するそうで。娘は『冬は暖かい』と言って、この空間がお気に入りです」





川端麻里子編集者
翻訳ノンフィクションの書籍編集者。環境、生物、性、科学など多様なテーマに取り組む。リサイクルやリユースを心がけた生活を楽しんでいる。
photo : Shinsaku Kato edit & text : Seika Yajima
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