麻生、茂木ら見せつけた「派閥の力」
今回の総裁選「決選投票」では、「小泉有利」とされた議員票を、高市氏が一気に「85票」上乗せして小泉進次郎候補を上回った。その背景に、麻生太郎元首相や茂木敏充・元幹事長らの動きがあった、とされる。自民党本部で議員投票が始まる直前に、麻生氏は「決選投票に残った場合、高市氏に投票するよう」43人の同派議員に伝えた。3日には茂木氏と会い、「最終的に勝ち馬に乗って影響力を狙うのでは」との見方が流れていた。
岸田政権で「解消」されたはずの「派閥」が、総裁選の最終場面で、「現役」の麻生派をはじめとして「まさかの復活」、高市氏を担ぎ上げた。「副総裁」就任も予想される麻生氏ら長老が、今後の高市政権のなかで、「総裁選の貸しを返してもらう」格好で、影響力を広げると見られる。
自民党が目指した「解党的な出直し」の観点から見れば、総裁選でも裏金問題批判にこたえる政治資金改革の議論はほとんど見られず、高市政権でも改革は停滞することになりそうだ。
石破(前)首相の動きもバランスを崩す恐れ
石破茂・前総裁は、新総裁選出直後のあいさつで、「あそこまではっきり『ワーク・ライフ・バランスやめた』といわれると、大丈夫か、という気はしなくはないが」と冗談交じりに皮肉った。直前の、新総裁あいさつで、高市氏が「私自身もワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てる。働いて、働いて、働いて、働いていく」と興奮気味に叫んだことを指している。「全国過労死を考える家族の会」の代表世話人は「国のトップに立とうとする人の発言とは思えない」と驚いたと報じられていた。
「前総裁」となった石破首相が10日にも発出しようと準備を進めている「戦後80年見解」について、以前から高市氏は反対していた。「衆院議員ではなく、首相として出すのであれば明確に反対だ」。首相名で出すことは「政府の立場だとされてしまっては困るので反対だ」と述べた(朝日新聞9月25日)。高市氏は、安倍元首相が発出した「戦後70年談話」の作成に関わっている。この問題も火種の一つである。石破氏が発出に踏み切れば、混乱が広がる恐れがある。
(政治ジャーナリスト 菅沼栄一郎)