アメリカのトランプ政権がもっとも懸念していること。それが「スタグフレーションの発生」です。とりわけ2026年秋に中間選挙を控える中、スタグフレーションを予防できなければ政権与党である共和党は大敗北を期すのではとも言われています。この状況、私達の生活にはどのような影響があるのでしょうか。
スタグフレーションとは?
【画像出典元】「stock.adobe.com/Umer」
スタグフレーションとは、「物価高+景気後退」の状況を指します。よく耳にするインフレーション(インフレ)・デフレーション(デフレ)は単独の現象ですが、スタグフレーションは「Wパンチ」の印象が強いものです。
通常は経済後退が進むと、物価は「下落」しますが、スタグフレーションでは景気の減少が「市場における供給の減少」に繋がり、価格が上昇します。インフレーションと不景気の同時発生を引き起こすのです。
よく指摘されるのは、戦争によるスタグフレーションの発生です。戦争や大規模な災害により生産設備の損傷や需要低下が引き起こされ、スタグフレーションの要因となります。
アメリカ経済のスタグフレーションの傾向
アメリカは数年前から、インフレが継続してきました。トランプ大統領が推進する関税政策の「税金部分」はアメリカ国民が負担するためです。政権はこれを好景気継続のために必要なものとしていますが、皮肉なことに関税による「インフレ再加熱」が個人消費を落ち込ませる可能性を否定できません。これが2025年から2026年にわたってのアメリカのスタグフレーションの懸念です。
日本にはどのような影響があるか
【画像出典元】「stock.adobe.com/beeboys」
スタグフレーションの本格化は、日本にどのような影響があるのでしょうか。当然アメリカ経済と日本経済は綿密な関係を築いているため、直接的な景気への影響も否定できません。その前提でより深掘りするならば、日本における投資と関税施策への影響が考えられます。
アメリカ株の落ち込み
もっとも影響が懸念されるのがアメリカ株の落ち込みです。「アメリカ株」と聞くとあまり実感がありませんが、日本において多くの方がNISAで積み立て投資をしているS&Pとオール・カントリー(オルカン)はアメリカ株と考えても過言ではありません(S&Pは90%前後、オルカンは60%前後がアメリカ株)。
過去30年、S&Pは7.5%、オルカンは9%前後の平均利率を実現しています。これが「とりあえず積み立てでNISAをやっておけば安心」という状況を作り出してきました。ただ2026年以降を推察した時、スタグフレーションによってこの状況が変わる可能性があります。アメリカを代表するナスダックやNYダウといった指標が落ちれば、日本の資産形成にも大きな影響が考えられます。
もっとも避けたいのは、これが「なんだ結局NISAなんて儲からないじゃないか」と日本において投資熱が冷えていくことです。投資は本来、それぞれが状況を勉強し、適切なポートフォリオを組むことを前提としています。それが「NISAやっておけば、特に考えずにアメリカ株を買っておけば大丈夫と言われたけど、話が違うじゃないか」となることで、NISA購入銘柄の売却がはじまり、アメリカ指標に連動した日経平均などを押し下げる可能性です。ここ数年しっかりと成長してきた、日本の投資リテラシーを下げることも懸念されます。
関税施策の緩和
もう1つの可能性が関税施策の緩和です。2025年以降トランプ大統領は次々と関税施策を打ち出していますが、2026年に入り「アメリカの施策が気にいらなければ、報復に追加関税を設定する」色合いが強くなっています。国際取引のルール上は明らかに逸脱行為なのですが、呆れて声が上がらないというのが実際のところでしょう。
ただ本記事で分析した通り、トランプ氏にとってはスタグフレーションの発生による支持率低迷の方が何倍も重要なものです。支持率の回復(=スタグフレーションの解消)のためであれば、関税施策などいくらでも緩和してくるでしょう。「日本は今や大切な友人になった」などと言いながら。これらの同氏のやり方はTACO取引と呼ばれ、関税における国際社会の笑いものとされてきました。
長年の熱量と多額の資金をかけてアメリカ大統領の座を射止め、あいだを明けて2期目の任期を実現したトランプ氏です。2026年秋の中間選挙での敗北によるレームダック(役立たず)化は、何よりも避けたいことでしょう。選挙の風向きによっては、インパクトのある関税施策の緩和を打ち出してくる可能性があります。そしてその時に対象になる可能性が高いのは、貿易相手国として強固な関係を築いている日本と考えるのが妥当です。
アメリカ側から見るとイラン戦争が出口戦略を探る段階に入ったことはほぼ確実です。次の課題は内政であり、その中でも優先順位が高いものが、スタグフレーションを発生させないこと。これからアメリカは、どのような方法でその課題に取り組むのでしょうか。日本も固唾を飲んで見守っています。