ネットバンクの残高を見て絶句
友晴さんの目に飛び込んできたのは、残高が1ケタ万円の表示でした。
「…これが全部じゃないよね?」
震え声で友晴さんが問いかけると、さくらさんはシクシク泣き始めました。
「これで全部…」
泣きじゃくるさくらさんから聞いた話によると、毎日の買い物で、いつの間にかお金がなくなってしまう、というのです。クレジットカードを確認すると、美容院や化粧品といった、比較的高額でわかりやすいもののほか、数百円、数千円といった細かい買い物の記録がビッシリ並んでいます。
コンビニ・百貨店・タクシーアプリ・Amazon・コンビニ・スーパーマーケット…
友晴さんが「これはなに? これは…?」とひとつひとつ尋ねても、涙目で「なにに使ったか、わからない」といって首を振るばかりです。
そしておしまいには、
「覚えていないんだから、しょうがないじゃない!」
と、逆ギレしてしまいました。
「僕、あの会社で順調に出世して、給料も順調に増えてるんですよ。専業主婦が1人、そんなにお金を使うものでしょうか?」
「お金の使い方に細かく口をはさむと、信頼関係が損なわれるんじゃないかと…。だから、なかなか言い出せなかったんです。でも、それが失敗の原因でした」
友晴さんは、今後の話し合い次第では、離婚も視野に入っているだろうと語ります。
夫婦の離婚理由「妻の浪費」は第3位
裁判所「令和6年司法統計年報」によると、令和6年に裁判所が取り扱った離婚申立ての動機で最も多かったのは、男女それぞれ上から順に下記のとおりです。
〈申立人:夫〉
第1位:性格が合わない(約60%)
第2位:異性関係(約12%)
第3位:浪費する(約11%)
第4位:性的不調和(約11%)
第5位:暴力を振るう(約9%)
第6位:病気(約4%)
第7位:酒を飲み過ぎる(約2%)
※ 総数:1万5,396件
〈申立人:妻〉
第1位:性格が合わない(約38%)
第2位:暴力を振るう(約18%)
第3位:異性関係(約13%)
第4位:浪費する(約9%)
第5位:性的不調和(約7%)
第6位:酒を飲み過ぎる(約6%)
第7位:病気(約2%)
※ 総数:4万3,033件
男女ともに、離婚理由としてもっとも多いのは「性格が合わない(性格の不一致)」ですが、「浪費する」も夫3位・妻4位となり、結婚相手の金銭感覚の違いが離婚につながっていることがわかります。
浪費や金銭感覚のズレは、感情的な衝突だけでなく、子どもの教育や将来設計にも深刻な影響を及ぼします。とくに30代での離婚は、子育てや住宅ローン、キャリア形成など、人生の基盤が揺らぎやすい時期に重なるため、精神的・経済的な負担が大きくなりがちです。また、さくらさんのように長年専業主婦だった場合、再就職には年齢やブランクの壁が立ちはだかります。
「任せる」という言葉には、信頼と責任が伴うことを忘れてはいけません。また、たとえ激務であっても、あるいは仲がよくても、定期的に夫婦間でコミュニケーションをとり、お金の使い方に向き合う時間をとる必要がありそうです。
〈参照〉
■裁判所「令和6年司法統計年報 家事編(p36第19表)」
(https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/toukei/toukei-pdf-12787.pdf)
