◆突然の急ブレーキ、そしてまさかの土下座劇
「そのとき、軽がいきなり急ブレーキを踏んだんです。慌てて私も減速して、心臓が飛び出るかと思いました」停車した軽自動車のドアがゆっくりと開き、大柄で筋肉質な男が降り立ちました。街灯に照らされたその姿は、まるで映画のワンシーンのようでした。
「“やばい、乱闘が始まる”って直感しましたよ。相手はクラウンに乗った若者でしょ? ケンカになるに違いないと思いました」
しかし次の瞬間、予想を覆す出来事が起きます。クラウンのドアが同時に開き、中から飛び出した若い男二人が、いきなり道路にひざまずいたのです。

本宮さんは、あまりの光景に言葉を失ったといいます。緊張と困惑が入り混じり、ただただ呆然とその場を見守るしかありませんでした。
◆真相はアルバイトの無断運転だった
土下座劇が収まり、立ち去ろうとした本宮さんに、軽自動車の男性に呼び止められ、急停車の謝罪と経緯を説明された本宮さん。ようやく状況を理解したといいます。「実はあのクラウン、自分の会社の車だったんだそうです。アルバイトに何度か用事を頼んで車を貸していたら、勝手に事務所から持ち出して乗り回していたらしくて」
大柄の男性が軽自動車を運転していたわけは、自分のクラウンを探すために隣人から借りたからでした。穏やかそうに見えた男性でしたが、アルバイトたちを前にすると一転して厳しい表情になり、怒号が響いていたそうです。
「乱闘になるかと身構えましたが、事情を知ってホッとしましたね。まさか“あおり被害者”が、クラウンの本当の持ち主だったとは…」
思わずそう語る本宮さんの体験は、ただのあおり運転目撃談にとどまらず、世の中には様々なお家事情もあるのだと再認識したそうです。
<TEXT/八木正規>
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営

