製品特性と推奨用途
完成した製品は、深みのあるルビー色で、チェリーやラズベリーを思わせる赤系果実のアロマに、わずかに樽由来のトースト香とスパイス香が組み合わさっている。一方、口に含むと心地よいアタックでピュアな味わいだが、アルコールのもたらす厚み、まろやかさがやや欠けていて、後半からフィニッシュにかけてやや物足りなさがある。しかし、従来のノンアルコールの赤ワインにはない興味深いピノの風味が残っている。アルコール度数はフランスのノンアルコールワインの基準である0.5%未満となっている。

飲用温度について、トマ氏は15~18℃、または10℃前後での提供を推奨している。ペアリングとしては、スパイスを効かせた鶏肉のグリル、季節野菜のロースト、ハードタイプのチーズなどを提案している。
トマ氏によると「最初のフィードバックでは大変良い反響を得ている」としているが、具体的な販売実績や市場シェアについては明らかにされていない。ノンアルコールワイン市場全体では、健康志向の消費者層拡大に加え、レストラン業界でのアルコールフリーペアリングメニューへの関心も高まっており、同分野の今後の成長が期待されている。
技術革新の方向性
現在のノンアルコールワイン製造技術は、主に脱アルコール工程の精度向上に焦点が当てられている。しかし、根本的には醸造段階からノンアルコール化を前提とした製法開発や、アルコール以外の成分による風味構築技術の進歩が、今後の品質向上において重要になると予想される。
ノンアルコールワイン市場の成長に伴い、今後は大手ワイナリーの参入も予想され、技術競争の激化と品質向上が期待される一方、市場の細分化が進む可能性がある。また、フランスワイン業界におけるノンアルコールワインの位置づけや、AOC制度との関係についても、今後整理が必要な課題として残されている。「モデラート」のような専門メーカーの動向は、これらの業界全体の方向性を占う上でも注目に値するだろう。

