「何を話すか」だけでなく、「いつ話すか」も重要に
診療の流れを妨げないためには、「何を話すか」だけでなく、「いつ話すか」も重要です。
話をきちんと伝えるために、気になっている症状を診察の冒頭でまとめて伝えることも重要です。特に複数の症状がある場合は、「今日は喉の痛みとめまいを診てもらいたくて来ました」というように、初めに整理して伝えると、診察が非常に進めやすくなります。
診察が始まってから追加で話したいことが出てきた場合は、次のようなタイミングで伝えると話がスムーズに伝わります。
●医師の質問が一段落し、間ができたとき
●カルテ入力が終わったとき
●「他に何かありますか?」と尋ねられたとき
一方、次のようなタイミングでの問いかけは診察の流れを中断し、診断の精度を損なう原因になります。
●検査や処置の最中(聴診しているとき、耳や鼻の診察をしているときなど)
●医師が説明している途中で、話が完結していないとき
●カルテ入力や薬剤量の計算など、集中して作業を行っているとき
こうした配慮は、必要な情報を的確に伝え、診察をよりスムーズかつ質の高いものにするための大きな助けとなります。
必要なことを適切なタイミングで伝える=「患者力」
診察室でのやり取りは、一方的な情報提供ではなく、医師と患者が共同で医療をつくる過程です。話の腰を折らず、質問に正確に答え、必要なことを適切なタイミングで伝えることは、患者にできるもっとも実践的な“患者力”の一つです。
「よかれと思って」の一言が医師の判断を鈍らせることもあれば、一拍置いて話すことで診断の精度が高まることもあります。タイミングを意識した言葉のやり取りは、限られた時間を最大限に生かし、最終的には患者自身の利益として返ってきます。
話し方と話すタイミングを少し見直すだけで、診療の質は大きく変わります。それは今日から誰でも始められる、最も身近で確実な“診療の質を高める方法”です
宮澤 哲夫
みやざわ耳鼻咽喉科 院長
医師・薬剤師
