退職代行サービス「モームリ」を運営する株式会社アルバトロスは、23日、新規受付の再開を発表した。
同社は今年2月、創業者の前代表らが弁護士法違反(非弁行為)などの疑いで逮捕・起訴されるという異例の事態に見舞われていた。今回の営業再開にあたり、同社は浜田優花氏を新代表に据え、外部専門家の助言を得て法令順守を徹底するとしている。
しかし、一度刑事事件にまで発展したサービスが、法的リスクをどう回避し、どのような「勝算」を持って再スタートを切るのだろうか。
前代表はなぜ逮捕・起訴された?
そもそも、なぜ「モームリ」の前代表らは逮捕・起訴されたのか。
その理由は、弁護士資格を持たない者が報酬目的で法律事務を行うことを禁じた「弁護士法72条(非弁行為の禁止)」にある。
弁護士ではない退職代行業者が法律で許されているのは、あくまで「本人の代わりに企業側に退職の意思を伝える」という“伝言”のみで、企業側との交渉はできない。
また、たとえば弁護士資格のない者が、手数料や報酬を目的として依頼者と弁護士を取り持つことも、弁護士法において禁止されている。
こうした状況の中で同社は、企業側との交渉が必要になった際、有償(報酬目的)で弁護士をあっせんしていた疑いが持たれている。
このため営業再開後の新体制の下では、「企業側との交渉を一切しない」というルールを徹底するとみられる。
「伝言」に徹するビジネスモデルに勝算はあるか
しかし、退職トラブルの対応も多い杉山大介弁護士は、「企業側との交渉を一切できないビジネスモデルと、従来のモームリが行ってきたサービス内容は相性が悪い」として次のように説明する。
「合法的な範囲で退職代行を運営しようとすれば文字通り『伝言』しかできないため、誰にでも模倣できる極めて単純な事務連絡サービスを提供することになります。
しかし、このビジネスモデルではサービス内容の差別化が難しく、コストカットによる競業他社との価格競争に陥らざるを得ません。単価を上げられない中で、交渉を一切しないというルールを守りながら事業を継続するのは、これまでのモームリが行ってきた、電話営業役をたくさん雇ってあれこれ交渉仕草を売りにしてきたスタイルとは合っていないでしょうね。どうやり方を変えるのかも見る必要があるかと思います」
モームリの営業再開は、退職代行というサービスが今後「伝書鳩」として生き残るのか、それとも衰退するのかを占う大きな転換点となるだろう。
企業は退職申し出を‟拒否できない”
一部報道によれば、退職代行への依頼が最も多いのは5月だという。
GW明けに仕事のモチベーションが下がる人の割合が58.8%に上るという調査もある(マイナビ 中途採用・転職活動の定点調査(2025年1月-3月))。この調査では、特に20代は73.5%と、年代が低いほどモチベーション低下が顕著であることも明らかになった。
モームリの営業再開は、こうしたGW前後の‟退職ラッシュ”を逃さないための布石とも言えるだろう。
杉山弁護士は「退職の手続き自体は難しいものではない」として、退職を考える人に向けアドバイスする。
「退職代行に依頼しようがしまいが、従業員が退職の意思を示した場合、企業はそれを阻害することができません。
あなたが辞めたいと考えた場合にすべきことは、辞める意思を2週間前に会社に伝え、それを証拠として記録に残すこと、そして手持ちの仕事や会社からの貸与物を適切に返却すること。この2点だけです。
もし報復的な対応をしてくるような悪質な会社であれば、それは退職代行の手には余る法的問題なので、弁護士に相談すべきです。自身の安全やリスクを考え、合理的な選択をしてほしいと思います」

