ブルゴーニュの複雑な歴史的背景

試飲会の途中、先代のフランソワ・フェヴレ氏が、ブルゴーニュの複雑な歴史の一端を語った。フランソワ・フェヴレ氏によると、1936年のAOC法制定時、「シャルルマーニュ」、「コルトン」、そして「コルトン・シャルルマーニュ」という3つのグラン・クリュが作られたが、これは市場で人気のある「コルトン」、「シャルルマーニュ」に加えて、二つの名前を合わせた「コルトン・シャルルマーニュ」を付け加えればビジネス上上手くいくだろうという、いわば、マーケティング的な側面があったことをユーモアたっぷりに明かした。
さらに氏は、コルトンの丘が三つの村にまたがっている複雑な背景に言及した。つまり、アロース・コルトン村は完全にカトリックの村、ラドワ村は反カトリックの村。ペルナン・ヴェルジュレス村は中立的な村。この宗教的な対立が、グラン・クリュの区画認定にまで影響を与えたという。
「反カトリックだったラドワ村は、AOC制定時に不当な扱いを受けたと感じていた。その埋め合わせとして、後にレ・ロニェのような区画がグラン・クリュとして追加された」
この逸話は、ブルゴーニュのテロワールが、単なる土壌や気候だけでなく、深い歴史や文化、時には宗教的な背景までもが複雑に絡み合って形成されていることを物語っている。
白ワインは、コルトン・シャルルマーニュ、2015年、05年、95年の垂直テイスティングとなった。特に若々しい2015年は、パワフルでありながらも見事な緊張感を備えており、近年のフェヴレが目指すスタイルが明確に表現されていた。一方、95年は熟成による複雑なアロマと深みを湛え、グラン・クリュの白ワインが持つ驚異的な熟成能力を見せつけた。
クロ・ヴージョでの記念夕食会

20日の夜、ブルゴーニュ・ワインの聖地であるクロ・ヴージョで記念夕食会が開かれた。この催しには、世界中からインポーターやジャーナリスト、そしてワイン愛好家ら約300人が招かれ、7世代にわたる家族経営の歴史を称え、未来への新たな一歩を祝福した。
メニューは五つのパートに分かれ、それぞれの料理に2本のワインを組み合わせるという豪華な内容。最初のアミューズは「ブルゴーニュ産ラタフィアのジュレをまとった鶉のトゥルト」。合わせたワインは『ラトリシエール・シャンベルタン 2019年』と『エシェゾー 2009年』。魚料理は「フォンテーヌ産オンブル・シュヴァリエとアルプスの湖のフェラ、香草バターソース」。供されたのは『コルトン・シャルルマーニュ 2018年』と、豊潤で複雑な『バタール・モンラッシェ 2008年』。

メインの肉料理は「アヴェロン産仔牛のフィレ・ミニョン、旬のキノコのフリカッセ添え」。この料理には祝宴の地にちなんだ『クロ・ド・ヴージョ 2015年』、そして凝縮感と深みを誇る『マジ・シャンベルタン 2005年』。「ブルゴーニュのチーズ」には、この夜のハイライトとも言える2本。『シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ 2010年』と、モノポール畑『コルトン クロ・デ・コルトン・フェヴレ 1990年』がマグナムボトルで供された。
祝宴は中央の演台に陣取った地元ブルゴーニュの音楽隊「レ・カデ・ド・ブルゴーニュ」による高らかな歌声で彩られ、参加者全員でグラスを掲げる伝統的な乾杯「バン・ブルギニョン」が何度も繰り返されるなど、終始和やかで祝祭的な雰囲気に包まれた。

淡水魚を使った魚料理と、それに合わせた『コルトン・シャルルマーニュ 2018年』
この夜、最も大きな注目を集めたのは、未来に向けたドメーヌの重要な発表であった。まず登壇したテクニカルディレクターのジェローム・フルー氏が「私たちは2022年から、シャブリ、コート・ド・ニュイ、コート・ド・ボーヌ、そしてコート・シャロネーズに広がる全ドメーヌ(140ヘクタール)でビオロジック農法への転換を完了させた。そして、記念すべき2025年ヴィンテージから、ドメーヌの全てのワインがビオロジック認証を取得することになった」とオーガニック栽培への完全な移行を宣言した。

続いて登壇した6代目当主フランソワ・フェヴレ氏は、普仏戦争やフィロキセラ禍、二つの世界大戦といった幾多の困難を乗り越えてきた家族の歴史を振り返った。そして、ブルゴーニュ・ワインの発展に寄与した祖父ジョルジュ・フェヴレが「シュヴァリエ・デュ・タストヴァン騎士団」の創設メンバーの一人であったという誇り高きエピソードが披露された。
そして、「この記念すべき年に、私たちは所有するクロ・ヴージョの畑の一部をオスピス・ド・ボーヌに寄贈します。このキュヴェは『キュヴェ・フランソワ・フェヴレイ』と名付けられることになりました」と発表すると、会場から大きな拍手がわき起こった。
最後に、現当主である7代目のエルワン・フェヴレ氏とエヴ・フェヴレ女史が登壇。父への感謝、そしてドメーヌを支えるスタッフへの敬意を述べるとともに、8代目となる子供たちを紹介。伝統を守りながらも革新を続けるフェヴレ家の力強い未来と、盤石な継承を印象付けた。

