

京都で和菓子を制作する〈御菓子丸〉が、四季折々の寺社仏閣の風景を、独創的な菓子と文とで表現。京都の風景に思いを馳せたくなる、美しい一皿を紹介します。

宇治市にある世界遺産、平等院。その庭園では、春から初夏へとうつろう頃に、優美な藤の花が咲き誇る。しなやかに垂れ下がる藤棚はやわらかな風に吹かれ、その様をぼんやり眺めていると、極楽浄土にいるかのような心地さえ覚える。淡い紫から白へと混じり合う色彩が、春の陽気のなかキラキラと輝く。その奥には平安時代と変わらない姿を見せる阿字池。美しさに身を包まれて、極楽浄土のさらに奥へいざなわれている感覚になるのだ。
山で採取した藤の花を一枚一枚摘み取り、シロップへと漬け込み、あたたかくなった気温の中に置いておくと、花の持っている酵母が発酵し始め、華やかな香りとともに酸味が出てくる。人が少し手を加えるだけで花の持っている力が開花し、おいしいものに変身する姿にうっとりとしてしまう。このシロップを凍らせ、口どけのよいシャーベットに仕立てた。
光に透ける藤色の涼やかさと、発酵がもたらす奥行きのある味わい。ひと掬いのシャーベットに、平等院の庭に満ちる藤の花の風景を写した。麗かな春の味わいをお楽しみいただけますように。
藤は4月中旬〜5月初旬。
『平等院』宇治市宇治蓮華116 0774‒21‒2861 拝観8時45分〜17時30分(17時15分受付終了) 無休 拝観料700円
photo : Yoshiko Watanabe
*『アンドプレミアム』2025年6月号より。
合わせて読みたい
FOOD 2026.4.11 隨心院に寄せた「はねずもち」。【〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景 vol.24】
FOOD 2026.2.14 城南宮に寄せた「三草善哉」。【〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景 vol.23】
FOOD 2026.1.10 目と口で味わう、白い山茶花の一皿。
―詩仙堂 山茶花雪―〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景 vol.22
和菓子作家 杉山早陽子
1983年三重県生まれ。老舗和菓子店での修業を経て、2006年から和菓子ユニット〈日菓〉として活躍。2014年から〈御菓子丸〉を主宰している。

Life with Flowers & Greens / 花と緑のある暮らし。&Premium No. 150
花や草木の息吹に心がほどける、気持ちのよい季節がやってきました。ふかふかの土を触り、みずみずしい若葉に触れ、ほころんだ花の香りを深く吸い込む。そんなとき私たちの心と体には、不思議と健やかな力が漲ってくるように感じます。大きな庭がなくてもいいのです。部屋にささやかな一輪の花を飾り、ベランダで小さな鉢植えを育ててみることから始めてみてください。そこにはたくさんの発見と喜び、そしてときにはその姿に「生き方」を教わるような体験までもがつまっています。今号の特集は「花と緑のある暮らし」。植物との心地よい日々を楽しむ10組の住まいや、フローリストに学ぶ花と器の組み合わせ、花を愛したアーティストたちの物語、プロの園芸家がすすめる道具、など、植物との暮らしを快適にするヒントが満載です。
andpremium.jp/book/premium-no-150

