都内の美食を巡り続ける男。情熱のスタンプを刻み、希少な席をものにする。
この物語の主人公は……
42歳 経営者。365日外食。Googleカレンダーは、あらゆる店で2年先まで埋まっている。東京の食の最前線を、最前列で鑑賞し続ける情熱を持つ。
ずらりと並ぶ開店祝いの胡蝶蘭、その贈り主からも“NEXT予約困難店”を知る手がかりになる。また、駅から離れた立地ほど、その腕に自信がある証拠でもある
世間は「予約が取れない」と嘆くが、そんなのは戯言。
“スタンプラリーヤー”なんて揶揄されたって、選ばれた者だけが辿り着く人気店の予約は、綿密に築き上げた店主との信頼関係、そして膨大な情報の海を泳ぎ切った努力の結晶だ。
予約乗っ取り、クレクレDM、二股ドタキャン……。これまで、さまざまな苦い思いを経験しながら、いまでは自らの枠で貸切会を開くほどになった。
懇意にしている和食店の大将から、「『しのはら』出身の気鋭の若手が独立するよ」と聞き、今夜は『白金台 桜井』を貸切にした。
― スタンプラリーの男のポリシー① ―
大将には粋な手土産をスマートに渡す
紹介者を通して取り付けた予約の際は、両者への気遣いも抜かりなく行う。宴の終盤には、「仕事終わりに一杯いかがですか」と、店主と一緒に乾杯するも常
『しのはら』で何度か会った店主を応援する気持ちと、この先、人気店になっても通わせてね、そんな気持ちも込めて、ちょっとした開店祝いを渡す。
― スタンプラリーの男のポリシー② ―
乾杯の泡は自分付け。皆にボトルを振る舞う
「主催者なので、最初の一杯は僕が」と場を和ませ、初対面同士をつなぐ。信用できる美食仲間が増えれば、ドタキャンに即対応できる人脈が生まれるからだ
6時間前、ひとりが急なドタキャンで慌てたが、なじみの友人が来てくれた。だから今日は良いボトルを振る舞おう。
『しのはら』仕込みの美しいビジュアル。節分を意識した二月の八寸は、関西風の稲荷寿司に大豆、イカと分葱のぬた和え、蛸のうま煮、牛ロースの黄韮巻きなど、全12品。一つひとつ、丁寧で繊細な仕事が光る逸品ぞろい
登場とともに歓声が上がる「八寸」、えも言われぬ香りが日本人のDNAに訴えかける「お椀」、名物の「すっぽんの春巻き」。
繊細な仕事が光る料理が運ばれるたびに、会話はやむ。
京都から取り寄せるまぐろ節、昆布で引いた出汁に松葉ガニの真丈、うるい、ばちこを合わせたお椀。
『しのはら』のイズムを自分流にアレンジした「すっぽんの春巻き」は、通年で供される看板メニュー。
その他、『いんぼすこ』のイズムを受け継ぐ逸品も提供する。コース(¥33,000)より。
皆それぞれに五感を総動員し、恍惚の表情を浮かべて味わう。
それは大将への礼儀であり、店への敬意だ。そして自身の美食感度がまたひとつ上がる。これだから、やめられない。
この店は絶対に人気が出る。予感は今日で確信に変わった。だからもちろん、次回の予約は押さえておく。
― スタンプラリーの男のポリシー③ ―
予約枠はギブアンドテイク。先にギブして関係構築
複数ある手札をひけらかすのではなく、店の定休日を事前にリサーチした上で、選択肢を提案。行きたい店を聞き、予定がマッチすれば、より距離は縮まる
でも、もう一歩踏み込んで、この機会に大将との距離を縮めておきたい。
「この近くに一見さんお断りの焼肉屋があるんだけど、僕、実は予約枠を持っていて。今度、一緒にどうですか?」
予約には予約で返し、惜しみなく共有する。それが俺の流儀だ。
店主との撮影はお約束!
「季節ごとのお料理を楽しんでいただきたいので、春夏秋冬、年4回のペースで来てくださるのが嬉しいです」とは大将。
予約はグルカレの他、電話でも受け付け。
滋賀時代の『しのはら』を皮切りに『祇園又吉』『銀座しのはら』での修業を経た、桜井智輝さんが2月4日に自身の店を開業。
厨房では実父がサポートする。貸切やワインの持ち込みは要相談。
■衣装
ジャケット¥86,900〈チルコロ〉、パンツ¥33,000〈ブリリア/ともにトヨダトレーディング プレスルーム TEL:03-5350-5567〉、ポロシャツ¥47,300〈ジョンスメドレー/リーミルズ&カンパニー TEL:03-6277-5715〉、スカーフ¥13,640〈ヴィンセンツォ ミオッツァ/ 真下商事 TEL:03-6412-7081〉
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