もがみ型護衛艦|出典:海上自衛隊ホームページ
日本政府が進める武器輸出政策の大転換に対し、韓国メディアが警戒感を強めている。背景にあるのは歴史問題だけではない。近年、防衛輸出を急拡大してきた韓国にとって、日本が「強力な競争相手」として浮上しつつあるためだ。
朝鮮日報は、日本政府による武器輸出の事実上全面解禁を受け、日本企業が世界の防衛市場へ本格進出する可能性があると報道。韓国防衛産業との競争激化が避けられないとの見方を伝えている。
◆韓国が先行した防衛輸出 日本も本格参入
韓国は近年、防衛輸出を国家戦略として推進してきた。ポーランドへのK2戦車やK9自走砲の大型輸出契約をはじめ、FA-50軽戦闘機、護衛艦などで存在感を高めている。
韓国製兵器は「比較的安価」「納期が早い」「技術移転に柔軟」といった点を武器に、中東や東南アジア、ヨーロッパ市場で急速にシェアを広げてきた。
その中で、日本政府は4月、防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、武器輸出を事実上全面解禁した。
従来は「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」に限定されていた「5類型」を撤廃。戦闘機や護衛艦、潜水艦など殺傷能力を持つ装備品も、防衛装備移転協定を結ぶ国への輸出が可能になった。
◆韓国が警戒する「日本の技術力」
日本が本格的に防衛輸出市場へ参入するとの見方が広がる中、韓国側が特に警戒しているのが艦艇分野だ。
韓国紙コリア・タイムズは、日本の武器輸出方針転換によって韓国との艦艇競争が激化すると報じた。オーストラリア海軍の次期護衛艦案件などを念頭に、日本企業が本格的に海外市場へ進出する可能性があると分析した。
韓国メディアが警戒する理由の1つが、日本の技術力だ。
韓国側では、日本について「輸出経験こそ少ないが、防衛技術そのものは高い」との評価が多い。特に潜水艦、護衛艦、レーダー、ミサイル関連技術などは国際的にも競争力があるとみられている。
さらに、日本がアメリカとの共同開発体制を強めている点も警戒材料となっている。
日本はミサイル防衛用SM-3迎撃ミサイルやPAC-3関連でアメリカと協力しているほか、イギリス、イタリアとの次世代戦闘機開発計画「GCAP」にも参加している。韓国メディアでは、こうした動きを通じて日本がアメリカや欧州との防衛協力を強化しているとの見方も出ている。
◆ODAとの「外交パッケージ」も警戒
もう1つ、韓国が警戒するのが、日本独自の外交力だ。
韓国メディアでは、日本が政府開発援助(ODA)や海上保安協力、中古艦艇供与などを組み合わせ、防衛輸出を「外交パッケージ」として展開する可能性を指摘している。
聯合ニュースは、日本が中古艦艇を低価格または無償で東南アジア諸国へ供与した場合、「魅力的な選択肢になる」と分析した。
実際、フィリピンやインドネシアなどでは、中国の海洋進出への警戒感を背景に、日本との安全保障協力を強化する動きが出ている。
◆「協力相手」であり「競争相手」
韓国にとって難しいのは、日本の武器輸出拡大を単純には批判しにくい点だ。
韓国自身も武器輸出を成長産業として推進しており、「防衛輸出は危険だ」と正面から主張しづらい。安全保障面では日韓協力が必要との認識も強まっている。
その一方で、市場では日本が新たな競争相手となる可能性がある。
韓国メディアの論調からは、「軍事大国化への警戒」と同時に、「強力な競争相手の出現」への複雑な本音も透けて見える。
