東京で「本当においしいもの」を食べようとすると、まず予約が取れない。SNSのキャンセル枠は1分で消え、11ヶ月先まで埋まり、最短で来年——そんな理不尽さえも、もはや「行く価値がある証拠」として受け入れてしまう店が、この街にはある。
松陰神社前の6席のカウンター、赤坂見附でやま幸のまぐろ+銘酒飲み放題、神楽坂で100種を超えるフリーフローとともに楽しむ料理、西麻布の隠れ家イタリアン。グルマンたちが何度断られても諦めない東京4軒を、予約攻略法とともに紹介する。
知る人ぞ知る美食エリア「松陰神社前」に昨年の10月オープン。カウンター越しに繰り広げられる美食劇場を楽しめるのは6席のみ
閑静な松陰神社エリアに出現したカウンターに行かずして、令和の美食については語れない
世田谷でいま、最もアツい一軒がある。
数ある名店で研鑽を積んだ若きシェフが編み出す、料理の枠を脱ぎ捨てた“旨いもの”を求め、美食家たちが詰めかけるのだ。
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『NARISAWA』と『WASA』の両店で研鑽を積んだ強者が店を開いたと聞けば、それだけで期待せずにはいられない。
昨年10月、松陰神社前にオープンした『KANTA』は早くも予約至難になるほどフーディーらの熱視を浴びている。
前野さんは30歳で独立。生まれは鹿児島で、小学生の時から豚こまでミルフィーユカツを作るなど、自由な発想で料理に勤しんできた
子どもの頃から大の食いしん坊だったというシェフ・前野勘太さん。
「自分が食べたい料理をジャンルに縛られず、自由に作りたい」との思いからジャンルレスを標榜することに。
アミューズ的な一品としてコースの幕開けに供される。インドのストリートフード、パニプリをアレンジしたもので、薄く揚げた丸い小麦粉生地の中にはムース状のピータン豆腐が詰めてある
ピータン豆腐を詰めたパニプリから始まるコースは、棒棒鶏あり、パスタありの多彩さ。
「すっぽんの春巻」。手間暇かけてとったエノキの出汁がベースのすっぽんの煮凝りを、うるいやタラの芽、ふきのとうなどの山菜とともに巻いている。米粉の皮なので食感も軽やか。そんな一品に合わせるのは紹興酒「女児紅 桂花林藏18年」¥3,000。ミネラル感豊かでまろやかな熟成感がすっぽんのゼラチン質に合う
しかも単に料理が多国籍というだけではない。料理のプロセス、扱う調味料自体がジャンルレスなのだ。
例えばすっぽんの春巻は、フレンチのフロマージュ・ド・テッドをヒントにすっぽんを煮凝りにして山菜とともに巻くといった塩梅。
「からすみの冷製ビーフン」は『WASA』のDNAを感じさせる一品。ねっとり感を出すために、切れ目を入れ細切りにして混ぜたアオリイカがいい仕事をする
からすみの濃厚な旨みと塩気には、ふくよかさとクリーミーな旨みを持つ鹿児島の地酒「天賦」(¥1,300)を。
「棒棒鶏」は身質の軟らかな大山鶏をコンフィにしてしっとりと仕上げている。ミンチ機で粗めにすったごまのチーマージャンも香り高い
ごまのコクを受け止めるのは、上質な甘みが特徴の鹿児島八千代伝の氷結芋仕込み「Crio」¥1,400。
「イサキの炙り椒麻ソース」。椒麻ソースとは、ねぎや山椒、しょうがなど香味野菜をペーストにしたさわやかなソース。菜の花のお浸しの醤油味といただくレアなイサキは、いわばお刺身代わり
やや和の趣のあるイサキにはロワールの白ワイン「サンセール」¥2,000。繊細な料理に清らかな香りが合う。
フレッシュとトマト缶の2種を使った「毛蟹のトマトソースパスタ」は、毛蟹のアメリケーヌソースも加えて奥行きのある味に。
「麻婆豆腐」は〆の一品ゆえやや軽めに仕上げるが、立ち上る香気は格別。
香りを大切に立体的な旨さを生み出す前野さんの思いが伝わる佳品。
黒さつま鶏のトップブランド“黒王”を用いた「鶏飯」
「成澤シェフの教えどおり、ひと皿に多くの要素を重ねないようにしている」と前野さん。
味覚の構成は複雑かつ緻密ながら、素材感を活かした皿は本能に直結する旨さで食通を虜にして離さない。
今回、5月21日(木)19:00~の予約枠を確保。3月27日(金)12:40にグルカレで予約の受付を開始。万全を期して臨みたい。
2.怒涛の20品と酒が刻む驚愕のコスパに、再訪を誓わずにいられぬ鮨の桃源郷
『鮨 若尊』@赤坂見附
大将の嶋田勝則さんは料理人歴30年。長く和食で腕を振るい、3年前に鮨に転向してすぐにセンスを発揮。日本酒と器への造詣も深い
港区でやま幸のまぐろや銘酒が飲み放題でなんと¥16,500。SNS枠も争奪戦という一軒は鮨の楽しさと席を制した優越感を同時に体験できる。
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11ヶ月先までの予約を取る『鮨 若尊』。いざ予約をとり始めれば、すぐに半年以上先まで埋まってしまう。SNSでのキャンセル枠の知らせも1分後には埋まる。
なぜそこまで人気なのかといえば、圧倒的な費用対効果が理由。
「やま幸」のまぐろ赤身。酢飯には奥出雲の山間部で作られる仁多米を使用
「若尊コース」は¥16,500にして、「やま幸」のまぐろ4種を含む鮨9貫につまみ10品、汁物や甘味も入り、お酒も飲み放題という大盤振る舞い。
「帆立フライのうにのせ」。レアに揚げた帆立とうにが、旨みの相乗効果を起こす。
乾杯用のシャンパンの他、ワインも用意
シャンパン1杯や銘醸蔵からの日本酒10種も含み、計算間違いではないかと疑うほど。
まぐろは贅沢な厚切りで提供。鮮魚も全国の漁港から直に仕入れ、神経締めや脱水など仕立てにこだわる。
半年以上先の予約が埋まるのも、裏打ちされた信念によるものなのだ。
毎月1日に11ヶ月先の末日までの予約が可能になる。直近で空席が出ることもあるため、ホームページをこまめに確認しておきたい。
【予約はこちらから】
URL:https://sushi-jackson.jp
3.12皿×100酒が誘うペアリングの迷宮へ“グルメのマニア”が詰めかける
『GOURMANIA』@神楽坂
日本酒やワインに加え、珍しいウイスキーなどの蒸留酒もあり、すべて飲み放題。勝沼郁哉さん、千寛さん夫妻の柔らかい接客も魅力
独創性が光る皿と無数の酒から最強ペアを自ら探る。
そんな未知なる体験を求め、食を愛する大人たちがカウンターを埋め尽くしている。
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独創的だが、食べると即座に体が「美味しい!」と直感する。唯一無二の料理で今や弩級の人気店となった『GOURMANIA』。
昨今は店主夫妻の頑張りもあって日に2回転を実現しているが、それでも最短で予約は来年3月という状況。
「カイノミの青椒肉絲」と「ホタルイカとたけのこXO醤油の炊き込みご飯」はピート香が強いウイスキーなどと。
コース(¥18,000)より。
「チリクラブ」。シンガポール名物をブラッシュアップ。カニのほぐし身に海老やホタテも加えて旨みを増幅。トマトベースのソースも程よい辛さ
ただでさえ美味しい料理の魅力を、さらに倍増させているのがフリーフローのアルコールだ。あらゆる銘酒をそろえており、総数は100種を優に超える。
もちろんペアリングも無限大で、「このジンならどうなる?」「ウイスキーも試してみようか」など自由気ままに普段はあまりしないような組み合わせにチャレンジできるのも醍醐味。
酒米「愛山」の豊かな旨みを感じる岩手「赤武」の冷蔵生酒は、味わいの奥に酸味と甘みも潜み、ソースに用いたトマトと響き合う。
天然木のクロモジが甘やかに香る秋田のクラフトジン「岑 No.65」。その個性的な香味が、パンチ力のある料理の旨みに負けず共鳴。
中華由来のシンガポール料理ゆえに紹興酒とマッチするのは当然。ソーダ割りをボトリングした「発泡黄酒 爽」なら、喉越しも軽快。
自家製コーラを「スパイスド ラム」で割れば香りが力強く立ち上るオリジナルの一杯に。コーラの香辛料が料理のスパイス感を加速させる。
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訪れるたびに新たな発見があり、次の予約をして帰る人が続出するのも納得だ。
今回5月17日(日)20:30~の予約枠を確保。争奪戦になること間違いなしなので、3月27日(金)12:10の予約開始をお見逃しなく。
4.“パスタの4連発”も許される隠れ家は、イス取りゲームの主戦場
『merachi』@西麻布
カウンター越しにシェフの調理を眺められ、その奥のキッチンからも活気が伝わる。ヒノキの1枚カウンターやレンガ調のモダンな壁など、温かで和やかなムードが心地良い
星条旗通りの裏手にある扉を、数多の食通がくぐり抜けた
食偏差値の高い大人こそ、心から“自由”を求める。
怒涛のパスタ攻め、前菜尽くし……など、わがままに楽しめる一軒がいまも食いしん坊たちの熱気で満ちている。
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ハイレベルなイタリアンが密集する西麻布で、2021年の創業から着実に人気店としての歩みを進める『merachi』。
杉本さんはフレンドリーに会話をしてくれるので、ディナーがさらに楽しい時間に。18ヶ月熟成の生ハムは、塩味が絶妙で口どけの良さが秀逸
オーナーシェフは、イタリアの星付きレストランで長年修業した杉本功輔さん。
イタリアの料理哲学や技術をベースに、各地の郷土料理を日本の食材で表現した、質実剛健な料理が食通たちに支持されている。
オープン当初はおまかせコース1本だったが、プリフィクスコースも加わり、これが人気に拍車をかける起爆剤に。メインの前は、9種類ほどある前菜とパスタから4皿を選べる。
例えば、前菜1皿パスタ3皿といった組み合わせも思うがまま。名刺代わりの「パーネ ブッロ エ アリーチ」や「仔牛トンナート」など、盛りだくさんのアミューズに序盤から胃袋が掴まれ、ワインのピッチも加速。
「佐渡産ズワイガニスパゲッティ」(+¥1,000)。
カニの出汁が凝縮した濃厚な旨みのトマトソースに、たっぷりのカニ身が贅沢。
パスタで一番人気の「蛤出汁 唐津産カラスミ スパゲッティ」。
蛤の出汁をパスタに吸わせ、塩味がまろやかなカラスミをたっぷりとのせた逸品。
プーリア州で親しまれている「菜の花とサルシッチャ オレキエッテ」。
ニンニクの香りとほろ苦い菜の花の味わいがマッチ。
「ネラーノ風スパゲッティ」は、素揚げしたズッキーニとプローヴォラチーズを絡めたクリーミーなソースにバジルの香りがふわり。
写真の料理はすべてプリフィクスコースの一例。
常時5種類前後あるパスタのうち1~2種類は手打ちで提供。成形する過程を間近で楽しめる
たった10席のカウンターでは、シェフが目の前でパスタを手打ちする演出もあり、テーブルを盛り上げる。
未知なるプリフィクスの楽しさに、「次はあれを食べよう」と店を出る前から再訪を決意する客が後を絶たない。
ワインはナチュラルとクラシックの両方をそろえる。選びやすいよう、すべて手書きの説明タグが付いている。ボトルは¥9,000~
― for Reservation! ―
グルカレにて毎月1日に翌々月の予約を受付
4月1日(水)に6月分の予約が解禁。確実に予約を取りたいのなら、グルカレに登録をして毎月1日0時の予約開始に備えよ。


