男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで...この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
― あの時、彼(彼女)は何を思っていたの...?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:サプライズで彼女を喜ばせていたのに…。交際1年で、27歳女が突然別れを切り出した理由
「雄大くん、最近どうしてるんだろう」
金曜の夜、西麻布のバーカウンターで、私はLINEのトーク画面をまた開いてしまった。先ほど、雄大のインスタのストーリーが更新されていたのを見て、忘れたと思っていたはずなのに、また思い出してしまう。
私たちのやり取りは3週間前から更新されていない。私が送った「今度ご飯行きましょう」に、彼は「ぜひ!来月落ち着いたら」と返してきた。
その後、私からは何も送れていない。
彼からも、連絡は来ていない。
雄大とは二度デートをし、私はすっかり彼に惹かれていた。
私は、何を間違えたのだろうか。2回のデートを、必死で振り返ってみたけれど、何が悪いのか、まったく検討がつかずにいる。
雄大と出会ったのは、去年開催された食事会だった。女性陣は、私と同じ総合商社に勤める同期三人組。男性陣の職業はバラバラで、雄大は、繊維系の会社に勤めていると言っていた。
京都出身の34歳。背は高くないけれど、清潔感があって、何より話していて疲れない。仕事の話やプライベートの話をしていると、彼はとても穏やかに聞いてくれた。
「美咲さんって、ザ・東京って感じがするなぁ」
彼はそう笑ってくれた。あの瞬間、私の中で何かが動いた気がした。35歳の私が、ここ数年で一番ときめいた瞬間だったと思う。
その日のうちに、連絡先を交換した私たち。最初のLINEは、翌日の夜に彼の方からきた。
― 雄大:昨日はありがとうございました。よかったらまた食事でも。
― 美咲:こちらこそ。お話できて嬉しかったです。ぜひ行きましょう。
1回目のデートは、広尾のイタリアンを彼が予約してくれていた。カジュアルすぎず、気取りすぎない絶妙な店選び。
― 合格。むしろ高得点…!!
思わず店内を見渡してそう唸る。そしてデートも楽しくて、雄大はとても素敵だった。
「美咲さんって東京出身なんですか?」
「そうなんです。正確に言うと、調布の方ですけど」
「へ〜すごい」
「雄大くんは?いつから東京に?」
「僕は社会人になってからです。なので、いまだに東京タワーとか見ると、めっちゃテンション上がります」
「でもそれは、私もですよ」
そう言って二人で笑い合った。
彼は丁寧に話を聞いてくれて、ワインも嫌味なくスマートに選んでくれる。
しかもお会計は、私が財布を出す前に彼がすっと済ませてくれる…と、かなり完璧な流れだ。
「雄大くん、ご馳走さまです」
「いえいえ。今日は来てくれて、ありがとうございます」
返答まで完璧だった。そして少しだけ沈黙が流れる。すると、察したのか雄大の方から2軒目に誘ってきてくれた。
「この後…どうしますか?もう1軒行きます?」
スマホを見ると時刻は22時過ぎだ。もう少しいられるし、明日はお休み。だから、私は笑顔で頷いた。
「いいですね。行きましょう」
しかし雄大は、少しだけ頭を抱えた。
「どこ行こうかな…すみません、広尾であまり飲まないので、店知らなくて」
「あ!それなら、西麻布でもいいですか?知り合いがバーをやっていて」
「もちろんです。さすが美咲さん」
今いる広尾のお店から、目的のバーは、歩いて15分。絶妙な距離だ。だからお店を出てすぐに、タクシーを拾うことにした。
「じゃあ、タクシーに乗っちゃいましょうか。私、タクシー代出すんで」
「え、いいんですか?…じゃあ、ここはお言葉に甘えちゃおうかな」
こうして、私たちは2軒目へ移動し、再び話に花を咲かせる。
「雄大くんって、やっぱり話が面白いですね」
「そうですか?嬉しい。でも美咲ちゃんも、意外に気さくで話しやすくて良かったです」
「え?そうですか?」
「いや、めっちゃ美人さんだし。もっと冷たいのかなと」
「ひどい(笑)そんなことないですよ」
この2軒目も雄大が支払ってくれたので、丁寧にお礼を言って、この日は解散となった。
― 久しぶりに、素敵な人に出会えた…!!
そう思い、私は浮き足だって帰路についた。
2回目は、私が選んだ南青山のフレンチにした。
「お店、選んでもらっちゃってすみません。僕が抑えるべきだったんですけど…」
「いえいえ。そこは、手が空いている方がやりましょう」
別にデートであっても、男性がすべてエスコートする必要はないと思う。そこはお互いイーブンでいい。
「さすが美咲さん、かっこいいな」
「ううん。雄大くん、忙しいかなと思って」
「ありがとう、助かりました」
そしてこのディナー中、私は彼に色々と質問をした。
京都のどこの出身か、ご実家は何をされているのか、どんな学生だったか…。ちょっと前のめりすぎたかもしれないけれど、気になる相手に対して質問が多くなることは仕方ない。
年齢的に、結婚を考えるのは当然のこと。これから先に進む可能性がある相手ならば、尚更だ。
しかし、雄大はすべての質問に穏やかに答えてくれた。そして、彼は京都にある老舗の呉服屋の息子で、ご両親は今も京都に住んでいるということが判明する。
「え…雄大くん、すごくない?」
「いや、まったく。普通だよ」
謙遜する彼の佇まいに、私はますます惹かれていく。
― この人と結婚したら、私の人生はどう変わるんだろう。将来は京都へ移住?
そんな想像まで、勝手に膨らんで幸せな気持ちになった。
「素敵だね!私、京都好きなんだ。どこか、おすすめのお店とかあれば教えて欲しいな」
「そうなん?美咲ちゃん、京都行くの?」
「うん。ご飯を食べに行くことが多いかな。予約の取れない名店も多いでしょ?」
「美味しいご飯屋さん、たくさんあるからなぁ」
そこから、雄大の京都の話を私は前のめりに聞いた。男性の話を聞くのは、デートの鉄則。
だから甲斐甲斐しく、私は「うんうん」と頷きつつ、適度にツッコミも入れながら聞いていた。
「美咲ちゃんは?ご両親は、今も調布?」
「うん、そうだよ。たまに帰っているかな」
「いいなぁ。実家が近くて」
そうして、この日のデートもとても盛り上がったので、私の中で、何かがカチッとハマる音がした。
なので解散となった時。私は、思い切って彼に尋ねてみた。
そして一緒のタクシーへ乗り込んだ私たちの間に、静かな沈黙が流れる。
― このパターンは…。
私は、この答えを知っている。
だから私はそっと、彼の手の上に自分の手を重ねてみる。二度目のデートでは、多少のスキンシップがないと、次に進まない。すると雄大は、驚いて私の顔を見たものの、そのままぎゅっと手を握り返してきた。
― これは…お互いに“アリ”ってことだよね。
麻布十番の私のマンションの下へ着き、私は笑顔でこう言った。
「雄大くん、今日もありがとう。またすぐにね」
「うん。またね。お休み」
優しい目だった。私は、彼が次のデートで、ちゃんと告白してくれると信じて疑わなかった。
しかしこの翌日。朝に送ったお礼のLINEが、なかなか既読にならない。
最初、私は焦らなかった。「仕事が忙しいのだろう」、と思った。それに、認めたくない。きっと本当に忙しいだけ…。
しかしこの後、ほとんどLINEが来なくなって、気がついた。
― あれ?もしかして、二度のデートで終わった…?
仕事も友達も住む場所も…全部自分の力で手に入れてきた。35歳まで、何ひとつ妥協してこなかった。外見だって、頑張って磨いている。
でも、今、私の隣には誰もいない。
私は、何を間違えたのだろうか。
デート中も、私は完璧だったはず。お店選びのセンスも見せた。会話の知性も見せた。彼の文化に合わせる柔軟さも見せた。
私は、まだ間に合うのだろうか。そして、何が悪かったのだろうか…。
▶前回:サプライズで彼女を喜ばせていたのに…。交際1年で、27歳女が突然別れを切り出した理由
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
▶NEXT:5月17日 日曜更新予定
二度のデートで完璧だったはずなのに…彼女が振られた理由とは?

