今週のテーマは「デートでは完璧だった35歳の美女から、男が静かに離れた理由は?」という質問。さて、その答えとは?
▶【Q】はこちら:2回目のデート、タクシーの中で手までつないだのに…。35歳女に3回目がなかったワケ
大人の恋愛は、難しいと思う。それを、美咲と二度ほどデートをして痛感した。
急に距離が近くなり過ぎてもダメだし、進まな過ぎてもだめ…。それに、一番厄介な真実は、美咲はとても美人で自立もしており、完璧な女性だということ。
つまり、彼女に非はない。
ただ、最後の連絡は「今度ご飯行きましょう」「ぜひ!来月落ち着いたら」で終わっている。
どうして、三度目がなかったのか?
そこには明確な理由があったものの、彼女を見ていると、東京という街が彼女の“幸せ”を遠ざけているように思う。
そして、美咲と同じ理由で独り立ち尽くし、手に入るはずの幸福をすり抜けていく女性たちは、この街に溢れている気がする。
美咲と出会ったのは、食事会だった。
この日、食事会に集まっていた総合商社勤めだという女性陣は、キラッキラだった。
今年で34歳になる僕は、京都から東京に出てきて12年。
それなりに東京の生活には慣れたつもりだし、東京に“染まった”と思う。しかし、こういう場所には、いまだに少し圧倒される。
美咲は、女性陣の輪の中心にいた。
美人だったし、最初は少し気後れしていた僕。でも話してみると気さくで、僕の出身を聞いて「京都のどこですか?」と具体的に聞いてくれた。親近感を覚えた僕は、彼女をデートに誘ってみた。
― 雄大:昨日はありがとうございました。よかったらまた食事でも。
― 美咲:こちらこそ。お話できて嬉しかったです。ぜひ行きましょう。
そうして、僕たちはデートをすることになった。
1回目のデートは、広尾のイタリアンにした。前に友人が行ってよいお店だったと言っていたので、気になっていた店だ。
しかしここで、僕は最初の違和感に気がつく。
美咲は、店に入って席に着くなり、店内をぐるりと見渡し、僕の方を見て満足げに頷いたから。
― ん?なんだろうこれは。
なんの儀式なのか、わからない。でもそれ以降美咲は普通だったし、僕の考えすぎだったと思い直して、デートが始まった。
それに話してみると、相変わらず美咲はサバサバしており、話しやすい。
「美咲さんって東京出身なんですか?」
「そうなんです。正確に言うと、調布の方ですけど」
「へ〜すごい」
「雄大くんは?いつから東京に?」
そして、会話のテンポも良いので助かる。
「僕は社会人になってからです。なので、いまだに東京タワーとか見ると、めっちゃテンション上がります」
「でもそれは、私もですよ」
楽しくて、時間はあっという間に過ぎていく。
そして美咲のようなデート慣れしている女性への、デートのマナーはある程度心得ているつもりだ。だから、さっと支払いを済ませると、美咲はちゃんとお礼を言ってきてくれた。
「雄大くん、ご馳走さまです」
「いえいえ。今日は来てくれて、ありがとうございます」
「この後…どうしますか?もう1軒行きます?」
22時過ぎという微妙な時間だ。でも、美咲はノリノリで答えてくれた。
「いいですね。行きましょう」
ただし、ここで僕は頭を抱えてしまった。この界隈の2軒目事情がわからない。
「どこ行こうかな…すみません、広尾であまり飲まないので、店知らなくて」
「あ!それなら、西麻布でもいいですか?知り合いがバーをやっていて」
この時、僕が少し身構えたのは言うまでも無い。
でも、東京生まれ育ちの女性で、行きつけのバーを持っているのは当然のこと。
「もちろんです。さすが美咲さん」
そう言ったものの、美咲は店を出た瞬間に、さっさとタクシーを捕まえ始めた。
「じゃあ、タクシーに乗っちゃいましょうか。私、タクシー代出すんで」
タクシー代を支払ってくれる気遣いには感謝をしたい。
けれども、的確に裏路地までタクシーの運転手さんに指示を飛ばしている美咲を見ながら、微妙な気持ちにもなる。
― この人、西麻布で毎晩飲んでるのかな…?
好意で知っている店を提案してくれたことはわかっている。
でも金曜の22時から、行きつけのバーへ、タクシーを飛ばして向かう女性を「この先の本命や結婚相手に見れるか?」と言われれば、何とも言えない。
こうして僕たちは、2軒目へ移動したが、話している最中は楽しいし悪くない。
だから僕は、もう一度彼女に会うことにした。しかし、この二度目のデートで「やっぱり違うな」と思うことになる。
二度目のデートは、美咲が選んでくれた南青山のフレンチになった。なぜここの店になったかと言うと、三日前になっても店の提示をしない僕に対して、美咲が店を出してきてくれたからだ。
「お店、選んでもらっちゃってすみません。僕が抑えるべきだったんですけど…」
「いえいえ。そこは、手が空いている方がやりましょう」
「さすが美咲さん、かっこいいな」
「ううん。雄大くん、忙しいかなと思って」
「ありがとう、助かりました」
正直、店を考えるのは大変なので、店を積極的に選んでくれるは嬉しいし、助かる。でもそこはデートの醍醐味というか、少しこちらに任せて欲しい部分でもある。
― これって…もともとこの店に来たかったら、僕をデートに誘った?いや、さすがにそれはないか。
今日の美咲は質問をたくさんしてくれたので、僕も誠実に答えていく。ただ、実家の話になった時のことだった。
僕の実家は、京都で代々呉服屋を営んでいる。すると、想像通り美咲の顔がパァッと晴れた。
「え…雄大くん、すごくない?」
「いや、まったく。普通だよ」
たぶん彼女は、無意識のうちに僕の身元を確認していたのだと思う。
でもこれも、彼女が悪いわけじゃない。
35歳で、本気で結婚相手を探しているなら、当然のチェックだろう。
そして、美咲の気遣いから、きっと京都の話で盛り上げようと思ってくれたんだと思う。でも、次の言葉に、僕は「この子、住んでいる世界が違うかも」と思ってしまった。
「うん。ご飯を食べに行くことが多いかな」
― 京都の、どの店へ行くんだ?
京都の良い店は、予約困難店が多い。それに、高級店も多い。東京からの新幹線往復代に、宿泊費。それに加えて飲食費…。
「そっか…美味しいご飯屋さん、たくさんあるからなぁ」
そう答えながらも、お金がかかる女性であることは、明白だなと悟った。
そして、このデートの帰り道の出来事が、僕の中で決定打となった。
色々と話した帰り道。なぜか一緒のタクシーで帰ることになった僕たち。すると、彼女の家が近くになった途端に、急に美咲が、そっと手を重ねてきた。
正直、突然のことで驚いてしまった。けれども、女性の手を振り払うのは失礼だろう。だから僕は、美咲が降りるまでそっとそのままにしていた。
「雄大くん、今日もありがとう。またすぐにね」
「うん。またね。お休み」
美咲は、とても美人だし性格もいいと思う。でも、ちょっと積極的すぎる女性は本命にはなりにくいと思う。
もちろん、大人の恋愛である以上、当然のステップなのかもしれない。二度もデートして、付き合うか付き合わないかをはっきりさせるのは、年齢的にも合理的だ。
でも、美咲はちょっと急ぎ過ぎているようにも見える。
そして何より、美咲の求める東京の“当たり前”レベルがわからなくて怖い。
美咲は素晴らしい女性だし、成功している。だから自信もあって当然だし、この東京で過ごしてきた時間や経験が、彼女をさらに輝かせているのも知っている。
ただ、その経験と気が利きすぎる点が逆に男を遠ざけている。
手慣れ感と、知識が邪魔をしている。
彼女のせっかくの魅力が、結婚を考える年齢の男にとっては、少しマイナス要因に働いてしまっている気がして、“もったいないな”と思った。
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