
キャッシュレス化が進む昨今。現金だと躊躇してしまう高額な買い物も、キャッシュレスであれば心理的ハードルが下がるという人も少なくありません。こうしたなか、12万部超えのベストセラー『節約の王道』の著者である林望氏は、多様化する現代の支払い手段に警鐘を鳴らします。林氏の新著『節約を楽しむ あえて今、現金主義の理由』(朝日新聞出版)より、そんな林氏が唯一「安全で利口」と語るキャッシュレス決済の方法をみていきましょう。
クレジットカード「分割払い」の危険性
物を買うということには、本来、相当な決意が必要なはずです。
新しい洋服を買おうというときでも、果たして買っていいかどうか、買うだけの価値があるのか、買って着ないと困るなとか、いろんなことを考えると思います。
以前から欲しかったスーツ1着が、仮に「80万円です」と言われたとき、現金で80万円を渡すのは、誰でも抵抗があるはずです。けれど、クレジットカードで払うと、それほどでもないかもしれない。
たとえばクレジットカードの支払いで、「毎月3,000円ずつでこれが買えます」などという甘言を弄して、「リボ払い」なんてのを勧められることもあります。
あれこそ蟻地獄の最たるものです。確かに毎月の返済額は決まっているけれども、あれは一種の借金なので、しかもその利子はどうかすると十数%などという高利であることも珍しくないのです。だから、買い物の残高によっては、毎月の支払が利子返済にしかならないとか、いやいや利子分にも足りない、とかいうようなことが発生して、どんどん借金が増えていくことも珍しくありません。
そういうふうに、これは便利だと思うようなことには、必ず落とし穴があると考えておいたほうがよいと思います。
ですので、私はリボ払いなどは、決してやらない。クレジットカードは使いますが、一回払い以外は使ったことがありません。
しかもまた、クレジットカードの分割払いというのは、利子が高い。金額や分割回数によって、そして会社によって異なりますが、年利12〜15%というのが目安のようです。銀行の定期預金の金利がだいたい0.02%前後ということを考えると、大変な数字だということがわかると思います。
だから「カードローンの過払い金を取り戻せます」という法律事務所の宣伝などが、今、盛んに流れているわけです。それは、結局、キャッシングは元より、クレジットカードのいわゆる月賦式の支払いでも、じつは相当高額な利子を払っているからです。
それよりも、自分の買える範囲のものを一回払いで、あるいは現金で払うというのがあるべき姿ではなかろうかと思うのです。
だから、私は分割払いはやりません。
「一括でこれだけのものを買うのはちょっと厳しいな」と思ったら、「それはお金が貯まるまで買わない」という選択になるわけです。
一番安全で利口な決済手段
今の時代、そうは言ってもクレジットカードを一切使わないわけにはいきません。ただ、常にリスクが伴うということを身をもって経験したので、せいぜい気を付けています。ましてやスマホを使ってキャッシュレス決済をするなどといったことはよほど危ないぞ、と肝に銘じています。
一番安全で利口なのは、事前にチャージしておくプリペイドカードではないかと思います。たとえ盗まれたとしても、チャージしている範囲内で済みますから、それ以上のリスクはありません。個人情報も入っていませんし。
私はnanacoカードと駐車場用のカードを利用しています。電車などの公共交通機関は使わないので、Suicaは持っていません。
nanacoカードは、セブンイレブンやイトーヨーカドーはもちろんですが、それ以外のお店でも、例えば吉野家やコメダ珈琲店でも使えて意外に便利です。
それから駐車場のカード。NPD(日本駐車場開発株式会社)という会社があって、そこが発行しているNPDカードを使っています。
私は自動車で動き回っているので、どこへ行っても車を駐める必要があるのです。そのときに、このNPDのパーキングを探しておいて、そこへ駐めて、NPDカードを使う。1万円入金すると1万1,000円分のパーキングができるようなシステムになっています。つまり東京のような駐車場の高いところでは、このカードを使うことで、一割引の恩恵を受けられるというわけです。
余談ですが、銀座に駐車する場合は、銀座のど真ん中にあるNPDを使っています。すると1日中駐めておいても定額1,600円です。
銀座なんて、どうかすると1時間3,000円なんてところもあるわけです。うっかりそういうところに駐めてしまうと莫大な金を支払うことになる。
一方、デパートの駐車場などは、週末など常に満車状態で待たされることを覚悟しないといけないし、何千円以上買うと、たとえば1時間までは無料、なんてサービスをしていますが、そうするとわざわざデパートに行って買い物をしなくてはならない、これは無駄遣いというものです。
だいいち、デパートなんて、今では実質的に「立体ブランドショップ街」に化しているところも多いので、私などは買う物がありません。
だから、どこに駐めると得かを事前にリサーチしておいて、NPDの駐車場があれば、その場所に駐めて、そこからは半径2キロ以内だったら歩いて行く。東京の繁華街には、NPDの駐車場がなくても、たいていはTimesの駐車場があります。
こちらも銀座あたりでは、1日1,800円くらいで駐めておけるので、まあこのどちらかを探して、あとは歩いて行く、これはこれで、ちょうどいい運動になるじゃないですか。往復で4キロ歩いたら、1時間歩行運動ができたということです。
得になって体にもいい。これはもっけの幸いというものです。
林 望
作家・書誌学者
