およそ10年で価格は1.8倍になったわけですが、当然所得水準がそこまで上がったわけではありません。牛丼チェーンは新たな価値を創出して客足を伸ばす努力が必要になります。大手3社の戦い方を見ていきます。

◆変革期を迎えた吉野家
吉野屋は2025年から2029年度までの中期経営計画のテーマを「『変身』と『成長』」としています。変革期を迎えているのです。足元で進めているのが、「新サービスモデル」と呼ばれる店舗への転換。顧客がゆったりと過ごせるよう、客席の間隔を広げ、客同士の視線も合いづらい設計にした店舗へと塗り変えているのです。
外装を従来のオレンジ色ではなく、黒を基調としたデザインに一新した「クッキング&コンフォート店舗」は、ソファ席やドリンクバーも設置しています。グリーンが配置された店内はファミリーレストランに近い雰囲気。一方で迅速に料理を提供するというサービス力は変わっていません。
新型店がファミレス客をターゲットにしているのは間違いないでしょう。競合を牛丼店とするのではなく、ファミリーレストランにしているのです。
◆“ファミレス化”が進むワケ
吉野家はかつてメニューを牛丼のみに絞り込んで効率的な営業をしていましたが、焼き鮭や豚丼など少しずつラインナップを広げ、現在では季節限定を含む様々な料理を提供するようになっています。出している料理がファミレス化しているのです。各店舗にフライヤーの設置も進めています。から揚げ定食やから揚げ丼の提供も行えるようになりました。
ガストを始めとするファミリーレストランも値上げラッシュが続いたため、割安かつ素早く料理の提供ができる吉野家は、ファミレス客を奪う潜在性を十分に持っているのです。
吉野屋は2024年度の売上高1378億円を、2029年度に1880億円に引き上げる計画を立てています。この間に240店舗以上の純増を予定。ファミレス化によってターゲットをずらし、店舗網の拡大に動きます。

