
昨年の著書『僕には鳥の言葉がわかる』(小学館)が大きな話題を呼んだ動物言語学者、鈴木俊貴先生に取材に行きました。軽井沢の森のあちこちに設置した、100個もの鳥の巣箱をひとつひとつ確認するフィールドワークに同行しながら、「シジュウカラには言葉がある」という大発見をするまでの話を聞いて⋯⋯、というつもりでしたが、鈴木先生が足場の悪い山道をものともせずサクサク歩くので、取材チームはついていくので精一杯。1時間ほどひたすらに巣箱を観察した後、先生がふと立ち止まって「そうだ。仕事のインタビューでしたね」と話を聞かせてくれました。
ようやく1つ目の質問。これまで学術的に、動物の鳴き声はあくまで感情を伝えるものとされ、言葉として捉えられていませんでした。そんななかで「どうして、常識に囚われない研究アプローチができたのでしょうか?」と。「それはね」と話し始めたかと思ったら、立て板に水のようにバババババーっと答えが戻ってきました。こちらが追加の質問をする間もなく、目の前で先生の経験談とそれに根ざすロジックがどんどん積み上がっていく。体感10分ほど、ノンストップ。考えは完璧に整理されており、「このまま書き起こすだけで原稿になる」と思うほどでした(常識を打ち破る仕事術、その内容は本誌にて!)。
場所は引き続き軽井沢の森の中。想像していた優雅な避暑地とは全く異なり、360度を木と笹に囲まれ、先生の後を追ううちに、いま自分がどこにいるのかさっぱりわからなくなっていました。風で葉が擦れる音と、鳥の鳴き声しか聞こえない静寂。鈴木先生はこうした森でひとり、何年も鳥を観察し続けてきたのです。双眼鏡と録音機、そして〈コクヨ〉の測量野帳というわずかな研究道具だけを携えて、じっと、鳥の言葉に耳を澄ませてきた。
孤独な時間は思索を深めます。森でひとり過ごす間に、鈴木先生はどれだけのことに考えを巡らせたのだろうと想像します。研究や仕事のことはもちろん、哲学的な自己問答もあったでしょう。そう考えると、先ほどの“立て板に水”にも納得します。私たちが質問したことなど、とっくに自分の中では答えがあったでしょうから。
以前ある人に「頭のいい人というのは、『私はそれについて考えたことがある』ということがたくさんある人」と聞いたことがあります。インタビュー中、鈴木先生は「僕はバカだから研究のことしか頭になくて」と何度もおっしゃっていましたが、当然そんなわけはなく、紛れもなく“頭のいい人”でした。「仕事に熱中する人って、本当にかっこいい!」と改めて感じたインタビューになりました。
(本誌編集部/松崎彬人)
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