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三笘薫のW杯不在は、むしろ日本代表のプラスに?過去の“史上最強チーム”の歴史からわかること

三笘薫のW杯不在は、むしろ日本代表のプラスに?過去の“史上最強チーム”の歴史からわかること

サッカー日本代表の三笘薫(みとま かおる)が5月9日のイングランド・プレミアリーグ戦で左太もも裏を負傷。全治2か月と診断され、6月11日開幕のW杯北中米大会の日本代表から外れた。開幕目前の悲劇に、ファンの間では嘆きの声が広がった。

ジャーナリストの森田浩之氏は「三笘薫の不在はもちろん痛手」としつつも、それだけで日本代表が崩れるなら史上最強ではなく、ただのスター依存のチームにすぎないとみる。(以下、森田氏による寄稿)。

ニュースカタリスト 森田浩之
’26年3月、イングランド対日本戦前日の三笘  写真/産経新聞社

◆「三笘がいないなら終わり」という悲観は早すぎる

 三笘薫の負傷が報じられた途端、「史上最強」のチームが急に凡庸になったかに見えた。サッカー日本代表の左サイドの切り札である三笘が、全治2か月のけがを負ったのは5月9日。翌週15日に行われたワールドカップ(W杯)代表メンバーの発表に、彼の名はなかった。

 ファンの間には当初、「三笘がいないなら日本は終わり」「史上最強といわれたのに、もうだめだ」というムードも漂った。だが、悲観するのは早い。見方を変えれば三笘の不在は、むしろ日本代表にとってプラスになるかもしれない。

 これまでも日本代表は、何度となく「史上最強」と呼ばれてきた。だがそんなときのW杯では、躍進を果たした試しがない。

 ’06年ドイツ大会では、中田英寿、中村俊輔、小野伸二らが名を連ね、「黄金世代」の集大成と言われた。しかし結果は1分け2敗で、1次リーグ敗退だった。’14年ブラジル大会では、本田圭佑、香川真司、内田篤人ら欧州組が並び、「史上最強」の声があふれた。だが初戦でコートジボワールに逆転負けしてからチームが硬直し、1分け2敗に終わった。

◆日本代表は“史上最強”より“不安を抱えたチーム”のほうが強い

 逆に日本代表は、不安要因を抱えて臨んだ大会で結果を出してきた。’10年南アフリカ大会では、大会直前まで岡田武史監督への批判が噴出していた。「守備的すぎる」「夢がない」と言われたチームは、結果的に16強へ進んだ。’22年カタール大会でも下馬評は高くなかったが、ドイツ、スペインという強豪を撃破した。日本代表は昔から、開き直ったチームのほうが強い。

 そもそも、W杯では完成されたチームが勝つとは限らない。この大会はもっと不格好で、偶然と混乱に満ちている。

 ’02年日韓大会で韓国が開催国特有の熱狂と相次いだ「疑惑の判定」の中で4強に進むことを、誰が予想しただろう。’10年南ア大会では、フランスの選手が監督と衝突して練習をボイコットし、優勝候補が大会途中で空中分解した。’14年大会ではブラジルが1─7でドイツに歴史的惨敗を喫し、開催国の熱狂が一夜で凍りついた。

 もちろん、三笘不在は痛い。だが、「三笘がいないなら終わり」という反応には、どこか古い「ヒーロー神話」が残っている。もし一人の選手が欠けただけで崩壊するのなら、それは史上最強ではなく、ただのスター依存のチームだ。

 日本代表は三笘だけに頼ってきたわけではない。実際、昨年10月に王国ブラジルに3─2で逆転勝ちした試合に、三笘は招集されていなかった。

 三笘の不在で「史上最強」の看板が少し傾いたとき、日本代表は初めてW杯向きのチームになるのかもしれない。

森田浩之
森田浩之
<文/森田浩之>

【森田浩之】
もりたひろゆき●ジャーナリスト NHK記者、ニューズウィーク日本版副編集長を経て、ロンドンの大学院でメディア学修士を取得。帰国後にフリーランスとなり、スポーツ、メディアなどを中心テーマとして執筆している。著書に『スポーツニュースは恐い』『メディアスポーツ解体』など
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