健康保険法等の改正案をめぐり、全国保険医団体連合会(保団連)と難病患者らが5月21日、都内で集会を開いた。
「薬の追加負担は許さない、国民皆保険を守れ」と訴え、20万1377筆の署名を国会議員4人に提出。集会では関節リウマチや潰瘍性大腸炎、線維筋痛症などの患者が「飲み合わせのリスクで市販薬は服用できない」と窮状を語り、医師からは政府の主張する「公平性」の論理そのものに疑問が呈された。
薬剤費の4分の1を保険給付の対象外に
健康保険法等の改正案は4月28日に衆議院本会議で賛成多数により可決され、参議院に送付された。
改正の趣旨は「持続可能な医療保険制度の実現に向けて、必要な保険給付等の適切な実施と世代間・世代内での負担の公平性の確保を図る」こととされ、一部保険外療養の創設のほか、後期高齢者医療における金融所得の勘案、出産費用の給付体系見直し、高額療養費制度の考慮事項の明確化などが盛り込まれた。
このうち今回の集会で焦点となった「一部保険外療養」とは、市販薬(OTC医薬品)と成分や効能が類似する処方薬を「OTC類似薬」と位置づけ、薬剤費の4分の1を保険給付の対象外として患者に「特別の料金」を求める仕組みだ。
対象は鼻炎薬・解熱鎮痛剤・抗アレルギー薬・便秘薬・水虫薬など77成分・約1100品目。政府は「医療用医薬品の給付を受ける患者とOTC医薬品で対応している患者との公平性」を見直しの理由に挙げ、年間約900億円の医療費削減を見込む。
「日本の宝が壊されようとしている」
集会の冒頭、全国保険医団体連合会(保団連)の竹田智雄会長は「国民皆保険制度は世界に誇る日本の宝。先人の血のにじむような努力で獲得し、維持発展させてきた。それがまさに今、壊されようとしている」と述べた。
竹田会長によると、追加負担の対象となるOTC類似薬は77成分・1100品目だが、将来的には1100成分・6000品目に拡大される見通しで、これは保険薬価収載品約1万6000品目のおよそ半分に相当するという。
さらに法案の条文上、薬剤だけでなく診察・検査・治療にも保険適用外の範囲が及ぶ可能性があるとも指摘。政府は「当面は薬に限る」としているが、竹田会長は「条文上は薬剤以外にも及ぶと読める。予断を許さない状況だ」と危機感をあらわにした。
「政府は現役世代の負担軽減を掲げているが、保険料軽減効果は1人あたり月33円にとどまる。若者で喜んでいる人は誰もいない」
「飲み合わせのリスクで市販薬は服用できない」
集会では複数の患者が切実な現状を訴えた。
関節リウマチに罹患して15年になる女性は、免疫抑制剤のほか、痛み止め・胃腸薬・湿布薬など複数の薬を併用しているという。発熱や頭痛の症状が出ても、薬の飲み合わせリスクから市販薬の服用は「危険であり、現実的ではない」と語った。
年金生活を送る同女性は、外来特例で月1万8000円の自己負担が生涯続く。「その上にOTC類似薬の追加負担が加われば、年金生活者には厳しい」と訴える。
大阪在住で線維筋痛症の女性患者も負担増を危惧する。先発品から後発品に切り替えた際に薬が効かなかった経験から、現在は先発品の長期収載品に対する選定療養費として8週間分で1848円の追加負担が発生しているという。
「OTC類似薬の負担増が重なれば、鎮痛薬カロナールを減らして辛抱しようかと、毎回お金の計算をしながら医療を受けている。もうすでに保険医療は崩壊している。全然安心できていない」(同女性)
「OTC医薬品で対応せざるを得ない患者が大勢いることこそ…」
医師の立場から発言した保団連副会長の橋本政宏医師は、政府が制度変更の趣旨説明で掲げる「医療用医薬品の効きめを受ける患者とOTC医薬品で対応している患者との公平性の確保」という考え方そのものに疑問を呈した。
「OTC医薬品で対応する人がいることを口実に、医療機関を受診して薬を処方してもらうことを問題視する考え方がそもそもおかしい。本当は医療機関を受診したいのに、さまざまな事情で受診できず、OTC医薬品で対応せざるを得ない患者が大勢いることが問題だ」(橋本氏)
橋本氏は、制度上は保険診療から除外されている人はおらず、無保険者などには生活保護などで救いの手を差し伸べることこそ重要だと指摘。その上で、次のように強調した。
「望ましくない現実があるからといって、それに合わせて望ましい現実を後退させるというのはとんでもない話だ。受診機会が十分に保障されれば、やむを得ずOTC医薬品で対処しなければならなくなることが減る。これこそが歩むべき姿だ」(橋本氏)

