
初投票、おめでとう
二月に行われた衆議院選挙は、自民党が圧勝。
これから世の中はどうなっていくのだろうか。……と思っている時に、一つ新鮮な話がありました。
「投票してきたよ」と、高校三年生の姪からLINEが来たのです。そういえば我が国では二〇一六年に、十八歳から投票ができるようになっていました。
それからすでに十年が経ったことに、まずは驚きます。
ついこの前まで幼児だった気がする姪が、もう投票できるようになったのか」……ということにも、驚きました。
初めての投票をしたり、初めて社会に出たりと、これから彼女は初めての経験を少しずつ重ねながら、大人になっていくのでしょう。
では初めての投票において、果たして姪は、どのような考えをもって、誰に投票したのか。
興味深いところではありますが、それは聞かない。
私の若かりし頃、今は亡き父が、「たとえ家族でも、それぞれの考え方で投票しなくてはいけないから、誰に投票したかを聞いちゃいけないし、考え方を押し付けてもいけない」と言っていたのであり、私は「へぇ、そんなものなのか」と思っていました。
それが一般的な感覚かどうかはわかりませんが、以来、私は父の考え方にのっとってきたのです。
それまで投票していなかった若者が、十八歳になって投票するようになると、政治に対して俄然、興味が出てくることでしょう。
誰に投票するかは、それぞれの候補者や政党の考え方を知らなくては、決めることができません。
選挙が終わった後も、自分が投票していれば、投票した候補者が当選したのか落選したのかに興味が湧きます。当選したのなら、その後の政治活動が気になってくるはず。
ギャンブルと重ねて申し訳ないのですが、投票した後に見る開票速報は、馬券を買って見る競馬のレースのように面白いものです。
投票した候補が優位に立っていれば「このままで!」と思うし、僅差で負けていれば「まくれ!」と思う。
目の前で進む勝負が、自分ごとになるのです。
選挙では投票を、競馬では馬券の購入をしていないと、この気分を味わうことはできません。
十八歳以上の人々は投票をすることによって、世の中への参加感覚を得るのです(ちなみに馬券の購入は、二十歳から)。
父が残した選挙にまつわるもう一つの家訓は、「絶対投票に行くこと」というもの。
私も今まで全ての選挙で投票をしてきましたが、姪もまた、そうあってほしいもの。
「初投票おめでとう。これからも毎回、投票に行ってね」
と、叔母は返信したのでした。
酒井順子さん
1966 年、東京生まれ。高校在学中から雑誌『オリーブ』にコラムを執筆。大学卒業後、広告会社勤務を経て執筆業に専念。2003年刊行の『負け犬の遠吠え』がベストセラーに。近著に『ひのえうまに生まれて-300年の呪いを解く』(新潮社)。
文/酒井順子 イラスト/升ノ内朝子
大人のおしゃれ手帖2026年5月号より抜粋
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