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“裸人間シャンパンタワー”動画が拡散で物議…「やらせだった」で済むか? 弁護士が指摘する「刑法上の犯罪」成立の可能性

“裸人間シャンパンタワー”動画が拡散で物議…「やらせだった」で済むか? 弁護士が指摘する「刑法上の犯罪」成立の可能性

先般のゴールデンウィーク中、実業家と称してSNS等で情報発信を行うインフルエンサーのA氏とおぼしき男性が、全裸の女性6人が組み体操のように重なる上に高級シャンパンを浴びせかける動画が投稿され、物議を醸した。

この件についてA氏は、19日に「女体シャンパンタワーの全てを話します」という説明動画を投稿し、「これはSNSの悪用の問題に一石を投じるための『やらせ』であり、8か月かけて計画した演出です」という趣旨の説明を行った。さらに、A氏はこの計画を実行するにあたり、「誰かを攻撃したり迷惑をかけたりしない」「犯罪行為をしない」という2つのルールを徹底したと強調している。

また、参加した女性のうち5名とは事前に契約を結び、1人6万円の報酬を支払った上で、SNSへの投稿も含む合意書に署名を得ていたとし、合意書の画像も映し出した。

しかし、A氏のパフォーマンスは本当に法的に問題ないのだろうか。刑法上の「わいせつの罪」ないしは「わいせつ」概念に詳しい荒川香遥弁護士(弁護士法人ダーウィン法律事務所代表)に聞いた。

「公然わいせつ罪」成立の可能性を否定できず

A氏は「犯罪行為ではない」と主張するが、荒川弁護士は「公然わいせつ罪」(刑法174条)が成立する可能性を否定できないと指摘する。

同罪は「公然とわいせつな行為をした」場合に成立し、6月以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料が科される。

荒川弁護士:「今回のケースで、全裸の女性らが尻を向けて重なり合う行為が『わいせつな行為』にあたることに争いはないでしょう。

問題となるのは『公然性』の要件です。判例はこれを『不特定または多数の人が認識できる状態』と定義しています(最高裁昭和32年(1957年)5月22日決定)」

報道によれば、現場は会員制バーの貸し切り個室で、女性以外の客は9名だったとされる。この状況だけを見れば、「不特定または多数」とは言えないようにも思える。しかし、荒川弁護士は必ずしもそうとは言い切れないと指摘する。

荒川弁護士:「公然わいせつ罪の保護法益は『性秩序と健全な性的風俗』です。そのため実務上、『公然性』は広く解釈される傾向にあります。

過去には、不特定または多数の人を勧誘した結果、料亭の密閉された部屋で数十名の客の面前でわいせつな行為を行った事例について、公然性が認められた判例があります(最高裁昭和31年(1956年)3月6日決定)。

今回の件についても、現場のバーが会員制とはいっても、会員は勧誘された結果としてなるものです。また、物理的に個室以外のスペースに多数の人が居合わせたことも考慮される可能性も否定できません。したがって、客が10人前後であっても、個室であっても、公然性が認められる可能性がまったくないとは断言できないのです」

ネット投稿は「わいせつ物頒布罪」にあたるか

次に、A氏は自身の名前と異なるハンドルネームのアカウントを用い、無修正の動画をSNSに投稿している(現在は削除されている)。この行為について「わいせつ物頒布罪」に問われる可能性も完全には否定できないという。

荒川弁護士:「女性の裸体、しかも大事な部分を隠さずにカメラに向けた状態で撮影された動画を、無修正でネット上に投稿しています。これは、『電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した』に該当し得ます。

また、A氏が動画内で映し出した『合意書』には、『甲(A氏)は本件行為の様子を写真又は動画にて撮影し、SNSその他インターネット媒体へ投稿できるものとする』との条項があります。このことから、最初から動画を意図的にインターネット上に投稿する気マンマンだったといえ、故意があったことは明らかです」

ただし、荒川弁護士は、この点についても処罰されるか否かの線引きは微妙だと指摘する。

荒川弁護士:「たしかに、投稿された動画は全裸の女性が映っておりモザイク処理等もされていない無修正のものですが、画像が不鮮明で肝心の女性の大事な部分を確認できないため、処罰に値しないとされる可能性もあります」

A氏の主張する「犯罪ではない」という点も、こうした法の解釈の隙間を狙ったものである可能性が考えられる。

多様化する価値観と法解釈の限界

本件は、A氏の主張と法的な評価の間にグレーゾーンが存在することを示している。

その根底には、公然わいせつ罪などの保護法益である「性秩序と健全な性的風俗」という概念自体の不明確さがあると荒川弁護士は指摘する。

荒川弁護士:「価値観が多様化した現代において、この概念をどう解釈すべきかについては議論があります。また、現状の規定のままでは、運用によっては一般市民の予測可能性を奪い、『表現の自由』(憲法21条)、『幸福追求権』(憲法13条)などに抵触する可能性も指摘されています。

わが国の刑法学の権威で元最高裁判事の山口厚・東京大学名誉教授は、わいせつの罪の保護法益を性的秩序・風俗と解するほかないとしつつも、『人々の意識の変遷を考慮することが必須』と指摘しています(※)。

また、近年、実務家や学者の間では、保護法益を社会的な秩序ではなく、『わいせつな行為を見たくない人の性的羞恥心』といった個人の法益に引き直して解釈する考え方が有力になりつつあります。

しかし、法令の解釈にはおのずと限界があり、国会による法律の改廃を待つほかないのが現状です」

※山口厚「刑法各論 第3版」(有斐閣)P.518参照

今回の騒動は、A氏にとっては個人的な目的達成のための演出であったかもしれないが、同時に、変化する社会の価値観と「わいせつの罪」の規定の間に生じている歪みを浮き彫りにしたと言えるかもしれない。

配信元: 弁護士JP

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