毎年7月になると、タレントのテレビ出演本数・上半期ランキングが発表される。また、年末には年間ランキングも出る。2022年、オードリーの春日俊彰が年間1位を獲得すべく、11月に駆け込み出演を繰り返していたことは有名だ。

だがいまや、そのランキング自体がほとんど意味をなさなくなっている。テレビに出ていることの優位性が、もはや形骸化しているからだ。
テレビから「一発屋」が消えていった...
もちろんテレビの影響力がゼロになったわけではない。いまでもドラマやバラエティなどで紹介された商品の売れ行きが急増するなど、一定の求心力がある。だが、テレビから火がつき、流行語や人気者が生まれるといった動きは、以前ほど見られなくなった。
多くの若い世代にとってテレビは「たまにつける程度」であり、「見るもの」から「インテリアの1つ」へと変わりつつある。
そうした変化の中で静かに消滅しつつある言葉が「一発屋」だ。
一発屋とは本来、テレビで爆発的な人気を得た後、急激に露出が減り低迷していったお笑い芸人を指す言葉だった。あるギャグやキャラクターがお茶の間を席巻し、翌年にはぱったり見かけなくなる――それが「一発屋」のサイクルだった。
それがいまは、そのサイクルが機能しない。理由は単純だ。そもそも「一発」が生まれる土壌がないからだ。不定期で放送されるお笑い特番は別にとして、かつて一発屋の登竜門だったレギュラーのネタ番組は激減した。いわゆる「バズる」といった熱狂を生み出す「発火源」はTikTokやYouTubeのショート動画、切り抜き動画にとって代わられている。
皮肉なのは、テレビから追いやられ、一発屋と揶揄された芸人たちの息が思いのほか長いことだ。小島よしおやダンディ坂野は営業の仕事で引っ張りだこ。ヒロシはソロキャンプブームの旗手に躍り出て、YouTubeで100万登録を超えた。むしろ以前より安定した生活を送っているケースも珍しくない。
一発屋という言葉の消滅はつまり、テレビが一発を生み出す力を失ったことの証明であり、その凋落を映す鏡でもある。かつて一瞬の爆発を生み出せたメディアが、その爆発力を失ったとき、爆発した者も、しなかった者も、同じ地平に立つことになる。つまりテレビで「人気がある」ということが何なのか、もはやだれも説明できなくなってきているのだ。
(川瀬孝雄)