費用対効果を重んじる金融業界は、短時間で高密度な満足感が不可欠だ。
機密を厳格に保持するため個室を確保し、限られた時間でいかに信頼を築くか、密度と質が問われる。
18時を回るとチェアは満席、スタンディングスペースも大勢で賑わうバーエリア。左に見えるスチールアートは止まり木がイメージ
軽くアペから始められるバーエリアも重宝する
金融業界は時間こそが資産。ゆえに会食も効率主義が徹底される。
ウェイティングバーに集合したあとで食事を楽しみ、仕上げに軽く飲んで2時間で解散が最もスマート。短く、密度は濃く、が好まれる。
英語が飛び交うバーはもはや海外。張り詰めた心をほぐすカラフルなオリジナルアペリティフもオンリスト。(左)「キウイ・エルダー・ダイキリ」¥1,100、(右)「アペロール・スプリッツ」¥935
外資だと本国のエグゼクティブをもてなす夜もあるため、英語でのサービスは必須。そこで同業者のオフィスも多い港区で、駅直結も合理的な『THE GRILL TORANOMON』は支持される。
マーケットが閉まると多くの若手バンカーがバーエリアに集結して、1日を終えた解放感で満ちる。
最大10名の完全個室はテラスが備わり雰囲気抜群。窓外に東京タワーや都心のビル群が一望できて壮観。虎ノ門ヒルズ駅直結のレストランと思えない贅沢な空間性を誇る
最奥部にはメインダイニングから完全遮蔽された個室もあって機密性の確保は間違いない上に、専有テラスも備わり、海外のペントハウスを彷彿とさせる。
仙台牛の「黒毛和牛のステーキ キャラメルオニオンソース」。飴色たまねぎに赤ワインのソースも美味。コース(¥7,700)より
料理もシンプルなグリル料理など、明快で、ワインリストも銘酒をそろえた世界基準。
だからこそ、最短で最適解を導き出すビジネスエリートに愛されている。
国産のみを扱う「本日の生牡蠣」(時価)。
この日は岩手・広田湾産。好みでエシャロット&赤ワインビネガーとともに。
2.門構えから隙がない“老舗の格”で、こちらの本気度はおのずと伝わる
『紀尾井町 福田家』
高層ビルが立ち並ぶ中で、そこだけ時が止まっているような重厚感漂う門構えが老舗高級料亭の風格を漂わせる。「ホテルニューオータニ」の向かいに立ち、タクシーも多く通るのでゲストを煩わせない
紀尾井町という街に漂う静謐な空気に包まれる
センシティブな議題の多い金融の会食には、格式高い店の至れり尽くせりで細やかな一流のもてなしがうってつけだ。
そんなシーンで金融マンたちが信頼を置くのが、『紀尾井町 福田家』。
2名から大人数まで使い分けできる全4室の完全個室。すべて和室でテーブルと座敷の2タイプ。各部屋に季節ごとに替わる掛け軸や書、花が飾られており、上質で厳かな和の趣が溢れる
昭和14年に割烹旅館として創業し、芸術家で美食家の北大路魯山人をはじめ、川端康成や湯川秀樹といった文化人や、歴代総理や政財界の要人たちが通った高級料亭として知られている。
「伊勢海老姿盛り」の器は魯山人作の織部俎板皿。「器は料理の着物」という言葉を残した魯山人の美学が息づく。至上の口福と眼福の空間は特別なゲストを招くにふさわしい。コース(¥55,000)の一例
ゆえに料理の味もお墨付き。19年連続ミシュラン二ツ星に輝く実力にも納得だ。
初代の福田マチが魯山人から指導を受け、その美意識が色濃く反映された店としても有名。
2階の踊り場に鎮座する魯山人作の信楽焼の壺は、昭和10年代頃の貴重な作品
彼の工芸品を2千点以上所有しており、その中にはなんと男性用の小便器の陶器も。ゲストがお手洗いに立つ頃合いに、その話題を振るのも、この店での打ち手のひとつ。
魯山人の美学と老舗の品格。歴史に裏打ちされた圧倒的な格調が、秘匿性の高い繊細な会食を成功へと導いてくれる。
3.アートな個室でもてなすフルアテンド焼肉で、着実に信頼を獲得する
『焼肉牛印 銀座店』
新進気鋭のアーティスト・間島秀徳さんの水をテーマにした作品『Kinesis No.681』。角に2枚かかるため、行き帰りで異なる面を楽しめる
アートに囲まれて肉を頬張る贅沢なひとときが叶う
エレベーターの扉が7階で開き視界に入るのは、とちの木の大きなアート。中に進めば、次は水をテーマにした絵画に目を奪われる。
テーブル席も仕切りがあるので隣客が気にならない
『焼肉牛印 銀座店』は、アートと焼肉の融合をテーマにする珍しい店。
それも世界的に知られる故・橋本夕紀夫氏が手掛けた空間に日本人作家の作品が並び、海外からのゲストを招く会でも喜ばれる。
7室の個室それぞれにもアートを展示。写真は美しい箔レリーフが印象的な中澤慎一氏の『Syntax』
個室は7室あり、肉をフルアテンドで焼いてくれるので重要な会話に集中することが可能。
白煙と共に塊肉が登場するプレゼンテーションに歓声が上がる。写真は群馬県の増田和牛
会の始まりには当日使用される厳選黒毛和牛のプレゼンテーションがあり、その贅沢な塊肉に心躍らない人はいない。
¥14,300のコースの一例は、肉寿司にランプやサーロインの焼肉、シャトーブリアンのサンドイッチ、トリュフリゾットなど。レアな日本酒から「シャトー・ラトゥール」まで、どんな重鎮にも対応できるお酒のラインナップに安心できる。
隙のないもてなしを決めたい時、“アートな焼肉”は強い切り札になる。
4.焼肉ならぬ焼魚(やきうお)を横並びで共有すれば、関係値は必ず深まる
『焼うおいし川 銀座凛華楼』
最大5人で利用可能な個室は離れのような設え。メインダイニングを通らず専用入り口から直接入店が可能
ひと目で分かる上質なネタとカウンター個室ゆえの臨場感は文句なし
会食慣れしている相手にこそ効力を発揮するのが、予定調和ではない店選び。新鮮な食体験と予想外のロケーションで確実に盛り上がるのが『焼きうおいし川 銀座凛華楼』だ。
場所はなんと三越銀座新館の飲食フロア。「ショッピングの合間でもあるまいし」と言うのは早合点。
目の前でトロをレア仕上げに
実はここ、会食にうってつけな個室を備えており、職人が焼肉ならぬ“焼きうお”を楽しませてくれる穴場中の穴場だ。
江戸前鮨で人気を集める『築地青空三代目』の別業態とあって、鮮度の良さはお墨付き。ゲストの目の前で魚を焼き、さまざまな味付けでサーブする。
「最強三色丼コース」(¥15,000)に含まれる丼の豪華さたるや!酢飯が見えないほどたっぷり敷きつめられたうにといくらの上に軽く炙ったトロをオン!
特筆すべきは、うにといくらを敷きつめた酢飯に、厚切りの炙り大トロをのせる三色丼。
その背徳的なビジュアルは写真映え必至。
「焼きうお7種盛り合わせ」の内容は仕入れに応じて。
上から、にんにくの若葉を醤油に漬けた薬味で味わう太刀魚。弾力感がまるで牛タン!?なふぐ。大トロは軽く炙り、なんと卵黄に絡めてすき焼き仕立てに。すべて職人がベストな状態に焼き上げてくれて、生魚が苦手な海外ゲストも喜ぶ。すべて「最強三色丼コース」より
確かな目利きによる、贅沢なネタをカウンター個室で焼く。その安心感と心躍る楽しさが共存すれば、キーマンも納得させられるに違いない。
5.短時間で質の高い時間を共有できる江戸前鮨こそ、タイパ会食の最適解
『鮨 青海』
個室から先に埋まるというほどニーズが高い一方で、少人数の会食ではカウンターが指定されることも。会の趣旨次第ではラフにカウンターという選択肢も
寛げる個室と臨場感あるカウンターは会の温度感に合わせられる
金融会食の要は信頼構築。そのために過剰な演出をすることはかえって逆効果だ。
地に足の着いた店選びを実践する金融マンの支持を集めるのが、西新宿の『鮨 青海』。近隣の外資ホテルに宿泊する海外ゲストを連れていくにもいい。
「鮪のあご肉の幽庵焼き」。趣向が凝らされたつまみに会話も弾む
バブルと言われて久しい鮨業界だが、この店のコースは¥8,980からと時代に逆行するお値打ち感。
つまみに始まり、握り、甘味まで20品前後が登場する圧巻のボリューム感は、そのまま食べ手の満足感へとつながる。
しっとりとした口当たりのまぐろ。つまみのあとに握りを提供するスタイル。ネタによって白酢と赤酢のシャリを使い分けている
中トロから始まる握りはネタによって白酢と赤酢を使い分けるなど食べ疲れさせない工夫も。
車エビ。歯に心地良い弾力と甘みが持ち味。いずれも¥16,000のおまかせコースの一例。
店の“目玉”として人気なのが「うにの9種食べ比べ」¥18,000。ハーフサイズ(¥9,000)をシェアするのもオススメ
この頃は価格が高騰し続けているうにの9種食べ比べを¥18,000で提供するなど、生真面目すぎないサービス精神を持ち合わせているのも魅力だ。
2名から最大10名まで利用可能な個室は「ここだけの話」をしたい場面で重宝。
バランス感覚の良さをさりげなくアピールし、相手の信頼を勝ち得たい。
▶このほか:米も熟成肉も銘酒まで“おかわり自由”という衝撃。神楽坂の焼肉店『Nose to Tail』


