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「取り調べ可視化」「日本版司法取引制度」導入決定から10年 2016年“刑事訴訟法”改正の結果と課題は?

「取り調べ可視化」「日本版司法取引制度」導入決定から10年 2016年“刑事訴訟法”改正の結果と課題は?

刑事手続きの各段階における制度が包括的に見直された、2016年の「改正刑事訴訟法」が成立してから10年となる。

この改正により取り調べの可視化義務付けや「日本版司法取引」と呼ばれる制度が始まり、国選弁護人制度の拡大も行われた。

2016年から2019年にかけて段階的に施行

2016年5月24日、「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」(改正刑事訴訟法)が成立。その後、段階的に施行されていった。代表的な改正内容と施行時期は以下の通り。

  • 裁量保釈判断にあたっての考慮事情の明文化:2016年6月23日
  • 証拠開示制度の拡充:2016年12月1日
  • 被疑者国選弁護制度の拡大:2018年6月1日
  • 日本版司法取引制度の導入:2018年6月1日
  • 取り調べの全過程の録音・録画の義務付け:2019年6月1日

「取り調べ可視化」が義務付けられたが…

2016年の刑事訴訟法改正のなかでもとくに重要なのが、身体拘束された被疑者に対し捜査機関が行う取り調べの録音・録画(可視化)が義務付けられたことだ。冤罪(えん罪)の防止や取り調べの適正化を目的としている。

この制度の導入により、裁判員裁判対象事件や検察官が独自に捜査する事件については、原則として取り調べの全過程の録音・録画が義務とされた。弁護側が、供述の任意性や取り調べの適法性を事後的に検証するための手段が確保されるようになった。

一方、日本弁護士連合会(日弁連)は、取り調べ可視化の対象となる事件は起訴されて公判が開かれた全事件中の数パーセントにとどまることや、逮捕されていない被疑者や参考人(被疑者以外)の取り調べは対象外であることを指摘し、可視化を全事件に拡大するよう提言している。

被疑者国選弁護人の対象が拡大

被疑者国選弁護制度について、それまでは対象が「死刑または無期若しくは長期3年を超える懲役もしくは禁錮にあたる事件」に限られていたところ、被疑者が勾留されている全事件へと拡大された。

被疑者国選弁護制度の意義は、身体拘束を受けた被疑者が、捜査の早い段階から防御権を実質的に行使できるよう、弁護人の援助を受けられるようにすることにある。

ただし、国選弁護人が付けられるのは勾留の段階からであり逮捕時点ではまだ対象外であること、報酬の低さに伴って担い手が不足していることなどの課題が指摘されている。

日本版司法取引の実例は少ない

日本版司法取引の正式名称は「証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度」。被疑者・被告人が犯罪解明に協力する見返りに、不起訴や求刑の軽減など有利な取り扱いを受けられる制度である。

想定されている対象は、組織犯罪や企業不祥事のように、内部からの協力がなければ立証が難しい事件だ。

もっとも、この制度の運用は限定的だ。報道によると、2026年3月時点で、活用が判明しているのは7例にとどまるという。

今後は再審制度が見直される可能性

これらの内容の他にも、2016年の刑事訴訟法改正により、以下のような内容が施行されている。

  • 裁量保釈判断にあたっての考慮事情の明文化:
    逃亡や証拠隠滅のおそれだけでなく、身体拘束が長引くことによる生活上・健康上の不利益なども保釈判断で明示的に考慮するようにされた。
  • 証拠開示制度の拡充:
    検察官請求証拠の開示に加え、一定の類型証拠や被告人側主張に関連する証拠の開示、証拠一覧表の交付、公判前整理手続の請求権付与などで、被告人側の証拠へのアクセスが拡大した。

なお、5月15日、政府は再審制度を見直す刑事訴訟法改正案を閣議決定した。

「再審」とは、有罪確定後に新たな証拠などをふまえ、無罪や減軽の可能性がある場合に裁判のやり直しを求める手続き。

今回の改正案が成立すれば、再審開始決定に対する検察官の抗告(裁判所の決定に対して不服を申し立て、上級裁判所に判断の見直しを求める手続き)は原則禁止となる。再審開始が決定された後も検察官の不服申し立てが続くことで冤罪の救済が遅れる、という問題に対処するための改正案となる。

配信元: 弁護士JP

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