◆ほとんどSNSを活用していない強み

「単にお金持ちというだけだと、どこか品がなかったり鼻につく部分が見えたりして、そこを嫌う視聴者は多いです。
似て非なるものというか、育ちがいいゆえにまとう天然な部分、それを“本物”と言っていいかどうかわかりませんが、本人に自覚のない嫌味のないハッキリした物の言い方は、本物の育ちのよさに立脚したものといっていいのではないでしょうか」
しかしハッキリした物言いは、時には諸刃の剣のように炎上につながることもある。
「たとえば一茂さんなんかは炎上しそうなことを言ったり、必ずしもすべての人への好感度が高いわけではないかもしれません。
しかし、それ以上に炎上させる側、批判する側が、この人に正論を言っても届かないなという部分があったりします。
正論なのにどこか悪い気がするというか、言ってもしょうがないなというところでいつの間にか収まっている。SNSを本人たちがほとんど活用しないというところもある種の強みかもしれませんね」
◆ファンタジーとして楽しめる存在
前述した“本物”には、ひねた物言いは通用しないということか。「ちょっとした成金やバブル的な存在、急に売れちゃった人なんかは『リアル』の延長であると思うんです。
しかしあの人たちは、どちらかというとリアルよりもファンタジー、価値観もすべて違う、別の世界の人が言ってることだなと視聴者が受け止め、ファンタジーサイドからの物言いになっているところはある気がします。
それでいて時に自分たちの気持ちを代弁してくれるようなこともキッパリと言ってくれることもある。
本家の『ザワつく』であれば高橋茂雄さん、他にも出川(哲朗)さんやホラン(千秋)さんなど、一般の視聴者目線でツッコめてしゃべれる人を配置してあるのが、ファンタジーと現実とをうまく結びつけてくれている。
そうしたファンタジーの物言いを、ひとつの『ショー』として楽しんでいる部分があると思います」
これだけ需要があるのであれば、前述の小泉孝太郎以外にも新たな『育ちがいい』タレントの発掘は進んでいくだろうか。
「そこはさすがに育ちが良くて喋れて好感度も期待できるという、条件的に限りがあるでしょうから、次々というのは厳しいかもしれませんね(笑)。
たとえばかつてのDAIGOさんのような、家柄がよくてどこか天然、しゃべりもできるという人が発掘されたら、さらなる人気を獲得できるかもしれませんが」
「育ちがいい人」系番組の拡大は、ザワつく色がさらに拡大するかたちで進んでいくのかもしれない。
<取材・文/太田サトル>
【太田サトル】
ライター・編集・インタビュアー・アイドルウォッチャー(男女とも)。ウェブや雑誌などでエンタメ系記事やインタビューなどを主に執筆。

