「壺を買うようになったら終わり」
ずっとそう思ってきた。壺はなんだか胡散臭い。買う前から騙されている気がする。ヤングな頃からさまざまなものを集めてきたけれど、壺だけには手を出してはいけないと信じてきた。実際、まったく魅力も感じていなかった。ところが、40代の中頃から、俄然興味が湧いてきた。最近では年に数個単位で壺を買っている。守備範囲は現代作家のものから骨董までとガバガバに広い。なかでも、平安時代から室町時代に能登半島で焼かれた珠洲焼(すずやき)が好き。縄文土器の壺もいいものがあれば欲しい。それにしても壺っていいなぁ。
壺ほどではないけれど、絵を飾る人生も、自分には無縁だと思っていた。昔から絵は好きだった。でも、絵を買うくらいなら洋服や時計を買いたいと思っていた。ところが、今は洋服や時計を少し我慢してでも、絵が欲しい。絵を飾る壁が欲しい。それだけの理由で別荘が欲しいとさえ思っている。何よりも壁の多い別荘。絵のない人生なんて、シナチクのないラーメンのようだ。家具がもともと好きなので、その延長線として興味を持ち始めたけれど、すでにその領域は超えている。
絵は気分によって掛け替えるけど、中にはしまうのが惜しく、結局いつもどこかに飾っている作品もある。一つは、現在、自宅のリビングにある1950年代に描かれた猪熊弦一郎の猫の絵、もう一つは、仕事場にかけている坂巻弓華のポートレイト作品だ。僕が選ぶのはいつだって小難しくない、見ていて気分が明るくなる絵ばかり。海外作家の作品もあるけれど、どちらかといえば、日本の作家の絵を飾ることが多い。理由は自分でもよくわからないけれど、絵の主題に共感する部分が多いのかもしれない。猪熊さんと坂巻さんの作品はいくつあってもいいくらい好き。そしてもう一人、ここ数年狙っているけれど、なかなか購入のチャンスが訪れない作家がいる。その作家は誰なのか。その答えは、僕が買った後にしよう。



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編集者 安藤夏樹

〈プレコグ・スタヂオ〉代表。日経BPにてラグジュアリー誌編集長を務めた後、2016年に独立。企業のオウンドメディアや広告の制作に加え、独自に出版事業も行う。主な出版物に『熊彫図鑑』(東京903会)、『たしかに熊だが』(著・いなもあきこ)、『サカマキマンガ』(著・坂巻弓華)など。北海道の木彫り熊の魅力を伝える〈東京903会〉を主催。ギャラリー活動も行っており、2026年1月には伊勢丹新宿店1階ザ・ステージにてイベント「プレコグのおもちゃ箱」を開催した。様々なものを買い散らしており、「散財王に俺はなる!」がキャッチフレーズだが、いまだ道半ば。

