就職氷河期世代はこれまでの人生においてさまざまな困難を乗り越えてきたわけだが、40〜50代になって改めて向き合う難問が「挑戦」だ。将来不安から必要以上に貯蓄を追い求めてしまう彼らに、同世代のひろゆき氏がシンプルな指針を示す。
◆「人生最後に挑戦したい」そう思う人ほど、その衝動の正体を知らない

そんなことが、ぼんやりと頭に浮かぶ氷河期世代。たしかに気力があって、下り坂とはいえ体力もなんとか持ちそうな年齢を考えると、40代から50代前半が何かに挑戦する最後のチャンスと考えるのは理解できます。
それに、新しく夢や好きなことに挑戦することは脳に刺激を与えたり環境の変化をつくり出したりする効果もあるので、脳の劣化を防ぐという意味でもオススメです。
ただ、その「挑戦したい」という衝動の本質を見誤ったまま行動に出てしまうと、大変なことになります。年齢に限らず言えることなのですが、「挑戦したいこと」の解像度を高くする必要があると思うのです。
例えば、「人がおいしそうに食べる顔が見たいから、飲食店を開きたい」と言っている人がいたとします。一見いい話風に聞こえたりもしますが、それは自分を騙している欺瞞でしかなかったりします。
というのも、本当に「人が喜んで食べる姿」を見たいだけなら、店を出す必要はないからです。東京であれば、炊き出しのボランティア需要なんていくらでもあります。そこで活動すれば目の前でおいしそうに食べてくれる人の顔なんて、今すぐいくらでも拝めます。
でも、そういう夢を語る人に限って、炊き出しのボランティアには1ミリも興味を示さなかったりするのですね。つまり、本音の部分では「飲食店というハコを持って、オーナーとして承認欲求を満たしながら、ついでにお金も稼ぎたい」という条件がセットになっているわけです。
◆思いつきだけの挑戦は、誰かの“養分”になるだけ
このように、自分の欲望の正体を直視できないまま「夢」という綺麗な言葉でカムフラージュして行動するのは、ただの自殺行為です。若い頃から現場で修業してきたプロが独立しても失敗する厳しい世界に、経験も体力もコネクションも足りない氷河期世代のおっさんが、思いつきで参入して生き残る可能性なんて限りなく低い。そんなレッドオーシャンに、なけなしの私財をなげうって飛び込むのは、不動産業者やコンサルにお金を吸い取られるだけの“養分”に、自らなりにいっているだけです。
もちろん、すべての人が失敗するわけではないのですが、僕が見てきた限り、自分の夢をビジネスにして生き残っている人というのは、若い労働力を雇える潤沢な資金力があり、業界に精通した知見とコネがある……といった条件を最初から満たしている人ばかり。それでも「なんとか成功する場合がある」というレベルの厳しい話なのです。
ロマンだけで成功するなら、世の中に失敗する人なんて一人も出てきません。自分の本音をロマンという綺麗な言葉でぬりつぶして自分に酔うのは、単なる思考停止です。そもそも、その挑戦欲の本質を見抜けないようでは、投資詐欺やら情報商材やら怪しげな「他人の欲望を食い物にする連中」の格好の餌食になるだけです。
構成・撮影/杉原光徳(ミドルマン)
―[ひろゆきの兵法~われら氷河期は[人生後半]をどう生きるか?~]―
【ひろゆき】
西村博之(にしむらひろゆき)1976年、神奈川県生まれ。東京都・赤羽に移り住み、中央大学に進学後、在学中に米国・アーカンソー州に留学。1999年に開設した「2ちゃんねる」、2005年に就任した「ニコニコ動画」の元管理人。現在は英語圏最大の掲示板サイト「4chan」の管理人を務め、フランスに在住。たまに日本にいる。週刊SPA!で10年以上連載を担当。新刊『賢い人が自然とやっている ズルい言いまわし』

