男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで...この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
― あの時、彼(彼女)は何を思っていたの...?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:2回目のデート、タクシーの中で手までつないだのに…。35歳女に3回目がなかったワケ
「拓実…。一旦、この結婚を白紙に戻したい」
交際1年。先月プロポーズをして、涙ながらに「YES」と答えてくれた由梨から、突然そう告げられた。
「ん?何を言ってるの?」
最初は、本当に意味がわからなかった。由梨がそんなことを言うなんて想像もしていなかったし、そもそも、彼女はプロポーズを受け入れている。
でも、由梨の表情は何も変わらず、曇ったままだ。
「ごめんね、拓実」
そう言ったきり、何も言わなくなった由梨。
これは、だたのマリッジブルーなのだろうか?それとも、別に理由があるのだろうか…。
由梨と出会ったのは、友人の紹介だった。丸の内勤務の由梨はふわっとした雰囲気の中にも芯があって、そのギャップに僕は強く惹かれた。
一方の僕も、彼女と同じ29歳で丸の内にあるメガバンクに勤務している。職場も近いし、何度かデートをしていくうちに自然に交際する流れになった。
「由梨、僕たち付き合わない?」
「はい」
こうして、なんのストレスも問題もなく、交際に発展した僕たち。
それはもしかしたら、出会った時から決まっていたのかもしれない。
同棲はしていなかっけれど、基本的に週末は一緒に過ごしていた。映画を見たり、公園を散歩したり…。
特別なことはなかったけれど、幸せだった。
由梨の良いところは、たくさんある。笑顔が可愛いところ、少し抜けているところ…。でも一番良いところは、由梨とは経済観念が似ているところだった。
ある日、一緒にランチを食べていたあと、お会計時にスッと自分のカードを出してきた由梨。
基本的に、女性は“奢ってもらって当たり前”だと思っている傾向がある。でも由梨は、ちゃんと割り勘派だった。
「由梨って、ちゃんと全部折半にするよね」
そう感心して言うと、由梨は少し考えてから、こう僕に言ってきた。
「お互い仕事をしているうちは、折半の方が楽だなと思って。どちらかの負担が重くなると関係性が崩れる気がして」
由梨は日系の保険会社に勤めており、ちゃんと仕事をしている。立派な会社だし、将来も安泰だ。
「由梨って素晴らしい女性だね」
そう言うと、由梨は少し恥ずかしそうにしながら笑った。
「でも、何かあったらよろしくね。女性には出産とか色々あるから、働けなくなる時期もあるわけだし」
「でも由梨の会社だったら、育休中とか手当も厚そうだしいいよね」
「どうなんだろう?多分いいとは思うけど」
そんな会話をしている時点で、なんとなく、僕たちの間に“結婚”と言う文字が浮かんでいた気がする。
「ちなみに由梨は、結婚しても仕事は続けるでしょ?」
「うん。続けるよ。でも今の会社にいるかどうかはわからないな。転職するかもしれないし」
「え〜やめときなよ、転職なんて。由梨の今の会社、条件もいいし年収だって悪くないでしょ?」
「うん、まぁそれはそうだね」
「お互い安定した会社で働いていたら、家のローンだって通りやすいし…。何よりも子どもが生まれた後、由梨が子育てしながらでも働きやすい会社を希望するなら、絶対に今の会社にしがみついていた方がいいよ」
「そんなことまで考えているの?」
この時はまだプロポーズも何もしていなかったけれど、由梨との結婚生活が、僕の中では簡単にイメージできた。
「拓実は?ずっと今の会社?」
「もちろん。転職する気は今のところないかな」
「そっか。まぁ良い会社だしね」
「うん。仕事はつまらないけど、給料とか文句はないし」
お互いの、仕事の話もよくしていた僕たち。
めちゃくちゃ気を使うわけでもなく、自然体でいられる。交際を開始した時から、もう夫婦みたいな感じだったのかもしれない。
特に大きなケンカをすることもなく、順調に関係を築いていった僕たち。
気がつけば交際して半年が経ち、1年になろうとしていた。そして僕たちも30歳になり、必然的に結婚が見えてきた気がする。
そこで僕は事前に、由梨に結婚のジャブを打ってみることにした。
週末の銀座のホコ天を歩きながら、僕は由梨に聞いてみる。
「由梨。僕たち結婚したら、どこに住むのがいいかな。子育てするなら、二子玉とかそっちもアリだよね」
「え?結婚?」
突然の発言に、少し驚いた様子を見せた由梨。逆に、僕はこの態度に驚いてしまった。
「え?だって、交際して僕たちもうすぐ1年だよ?」
「そうだよね…。いや、考えてくれていたんだなと思ったらびっくりしちゃって」
「二子玉、子育てしやすいらしいよ」
「そうなんだ。でも目黒とか、逆に実家が近い横浜とか…その界隈も良さそうだけど」
「いや、二子玉にしよう。子どもは5人がいいな」
「子ども5人は無理だよ〜」
「いいじゃん、大家族」
そんな感じで、僕たちは楽しく将来の話に花を咲かせていた。
そしてこの話からしばらく経ち、僕は由梨にプロポーズをすることにした。
シチュエーションを色々考えたけれど、外でみんなに見られている中跪く…なんてことは恥ずかしくてできない。
だから僕は、自宅でプロポーズをすることにした。そして日にちもなんでもない日を選んだ。
普通の日が、特別な日になる。それこそに価値があると思ったからだ。
「あのさ、由梨」
食事を終え由梨が洗い物をしているとき、僕は事前に準備をしていた、花束と指輪を寝室のクローゼットの中から取り出し彼女に差し出した。
「結婚しよう」
「……え?本当に?」
あまりにも突然のことで、“理解が追いついていない”という顔をしている。だから僕は、もう一度畳み掛けた。
「驚いた?でも、僕たち前にも話していたでしょ?それに、結婚するなら由梨しかいないと思って」
そう言いながら、指輪を由梨の指にはめる。すると由梨もようやく実感が湧いてきたのか、声を震わせながら、頷いた。
「ありがとう…拓実、ありがとう」
こうして、婚約というステージに進んだ僕たちだった。
しかしこのプロポーズから1ヶ月後。由梨から、突然の婚約解消を言い渡された。
一緒に、時を刻んできた。これから、さらに幸せになる予定だった。それなのに、どうして由梨は僕のことを急に拒んだのだろうか…。
▶前回:2回目のデート、タクシーの中で手までつないだのに…。35歳女に3回目がなかったワケ
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
▶NEXT:5月31日 日曜更新予定
結婚を、突然白紙に戻した女の考えとは?

