今週のテーマは「プロポーズされたものの、女が断った理由は?」という質問。さて、その答えとは?
▶【Q】はこちら:条件は最高なのに…。メガバンク男(30)との婚約を破棄した女が覚えた「致命的違和感」とは
朝から気が重かった。今日は夕方から拓実と会う約束をしている。
でも会って言わなければいけないことがある。
彼からプロポーズをされてから、ずっと考えていた。
― 本当に、このまま結婚していいの?やっぱり一度、整理してから返事をすべきだった?
そんなことをグルグルと考えているうちに、私は一つの決断に至った。
だから夕方。交際して1年になる彼に、私は別れを告げた。
「拓実…。一旦、この結婚を白紙に戻したい」
拓実は大手のメガバンクに勤めている。収入も安定していて、結婚すれば、この先路頭に迷うこともないだろう。
それに、私は30歳になった。結婚するには最高のタイミングだと思うし、今、彼を逃したらその先にまた結婚できる相手に出会えるのか…。そもそも、結婚できるチャンスがあるのかさえわからない。
正直に言うと、私は今すぐにでも結婚したい。
でも、彼と結婚したら自分が壊れそうな気がした。
だから散々迷った結果、私は“別れ”を選ぶことにした。
拓実と出会ったのは、友人の紹介だった。端正な顔立ちに清潔感のある爽やかな雰囲気。少し神経質そうではあったものの、最初のうちは、そこは気にならなかった。
お互いに29歳で、しかも職場も丸の内勤務ということもあり、とても自然な流れで、二人で食事へ行くようになった。
すると、何度目かの食事の時に、拓実の方から告白をしてきてくれた。
「由梨、僕たち付き合わない?」
「はい」
「そろそろ結婚したい」と思っていた私にとっては、最高のタイミングだった。
相手は条件的には申し分ないし、何よりも一緒にいて楽しい。だから、このまま幸せな日々が続き結婚する…。そう信じていた。
しかし、恋愛において完璧なんてことはない。
交際してから、私はいくつか気になることが出てきた。まず、拓実の金銭感覚だ。拓実は、細かいところでも必ずお会計を折半する。
コンビニや週末のランチも基本的に綺麗に割り勘。今は私も働いているから構わない。
週末に外でランチをしても、自分も支払う方が相手に借りを作らない気がして楽だ。
「由梨って、ちゃんと全部折半にするよね」
そう感心する拓実に、私は笑顔で返す。
「お互い仕事をしているうちは、折半の方が楽だなと思って。どちらかの負担が重くなると、関係性が崩れる気がして」
年収は、きっと拓実のほうが上だと思う。でも、今は働いている以上、奢って欲しいとか思っていない。
ただもちろん、私にも例外はある。
「でも、何かあったらよろしくね。女性には出産とか色々あるから、働けなくなる時期もあるわけだし」
もし結婚して子どもを授かったとき。女性は、必然的に休まなければいけない時がくる。
ただこの話をした時に、拓実は素っ頓狂な返信をしてきた。
「でも由梨の会社だったら、育休中とか手当も厚そうだしいいよね」
「どうなんだろう?多分いいとは思うけど」
― これはつまり、出産・育児休暇中でも支払いはそのままってこと…?
私がそう不安になるのには、いくつか理由があった。
まず、拓実は無意識に「女性はこうあるべき」を当然のように押し付けてくる傾向がある。
「ちなみに由梨は、結婚しても仕事は続けるでしょ?」
「うん。続けるよ。でも今の会社にいるかどうかはわからないな。転職するかもしれないし」
「え〜やめときなよ、転職なんて。由梨の今の会社、条件もいいし。年収だって、悪くないでしょ?」
彼氏や大事な人だったら、ここは応援してほしい。でも拓実は悪意なく、ネガティブな言葉を私にぶつけてくる。
「うん、まぁそれはそうだね」
「お互い安定した会社で働いていたら、家のローンだって通りやすいし…。何よりも子どもが生まれた後、由梨が子育てしながらでも働きやすい会社を希望するなら、絶対に今の会社にしがみついていた方がいいよ」
「そんなことまで考えているの?」
現状、お会計などは折半で対等な関係のはずなのに、“家のことは女性がするもの”という考え方も垣間見られる。
― 結婚したら、ちょっと面倒くさそうなんだよね…。
実は交際当初から、密かに私はこう思っていた。
漠然と未来の話をしている分にはまだ良かった。時々言われる嫌味などは軽くスルーすれば済むし、そんなことで別れるまでには至らない。
だから、なんとなくズルズルと付き合って、気がつけば交際期間は1年になろうとしていた。
そんな時のことだった。
週末に銀座の歩行者天国を二人で歩いている時に、急に拓実が“結婚”の話をしてきた。
「由梨。僕たち結婚したら、どこに住むのがいいかな。子育てするなら、二子玉とかそっちもアリだよね」
「え?結婚?」
あまりにも突然のことで、私は思わず口が開いてしまった。
― 拓実は彼氏としてはいいけれど…。結婚だとどうなんだろう。
そう思っていると、拓実はどんどん畳み掛けてくる。
「え?だって、交際して僕たちもうすぐ1年だよ?」
「そうだよね…。いや、考えてくれていたんだなと思ったらびっくりしちゃって」
拓実の言っていることはわかる。お互い30歳という年齢もあるし、結婚も考えなければいけない。
いや、結婚を意識するのはごく自然なことだと思う。
でもこの話をしている最中から、私はなんとなく嫌な予感がし始めた。
「二子玉、子育てしやすいらしいよ」
「そうなんだ。でも目黒とか、逆に実家が近い横浜とか…その界隈も良さそうだけど」
「いや、二子玉にしよう」
まず、人の話をまったく聞かない。二人で住む家の場所の話なのに、自分の希望のみを言い、こちらの望みはほぼスルーだ。
そして何より、子どもの話になった時。彼の本質を、私は見た気がした。
「子どもは5人がいいな」
「子ども5人は無理だよ〜」
「いいじゃん、大家族」
こんなことを言ったらこちらも性差別になるかもしれないけれど、子どもを実際に産むのは私の方だ。
こちらの気持ちなどまるで無視で、自分の理想を無自覚で押し付けてくる。
そんな“コントロール気質”を、私は感じ始めていた。
「結婚したら、こういうことが増えていくのかもしれない」
私の気持ちは、少しずつ後回しになっていくのかもしれない。そんな不安が、妙に現実味を帯びて見えた。
そう思い、私はそろそろ彼の元を離れようかと思っていた。
そんなタイミングでの、プロポーズだった。
平日に彼の家で食事をし、洗い物をしていた時。急に、拓実が真面目な顔をして近づいてきた。
「あのさ、由梨。結婚しよう」
「……え?」
この時、とっさに私の頭に浮かんだのは「嬉しい」とかではなく、「どうしよう」だった。
別に嫌いではないけれど、結婚したら窮屈な幸せしか見えない。
わかりやすいモラハラでも、わかりやすい男尊女卑でもない。でも、何かがひっかかる。
― どうしよう…。
拓実にプロポーズされて以降、ずっと考えていた。
結局、私が出した答えは、「NO」だった。
自分の幸せは、自分で作るもの。そして自分の権利や自尊心を誰からも邪魔されたり壊されたりしたくない。
だから彼のプロポーズを断り、白紙に戻す決断をした。
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▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟
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