
スイス、多治見、ロンドン——各地を往還しながら行われた、伝統に根ざすものづくり。
2025年10月10日(金)~19日(日)、東京・渋谷にて、「Shared Ground(共創の場)」という総称のもと、多治見の職人と国際的なデザイナーによる二つの展示「Design with Japan」と「TILE WORKS」が開催される。


1300年を超える陶磁器の伝統を育む岐阜県・多治見。「Shared Ground」では、同地の製造業者や職人とデザイナーが協働して生み出したオブジェや試作品、プロダクトを紹介。長く受け継がれてきた伝統を大切にしながら、現代の生活に会う形に再解釈した試みを発表する。
「Design with Japan」
滞在制作を経て生まれた、アートピースのようなプロダクト。
ギャラリー『CIRCLE』では、スイス人デザイナーのノエラーニ・ルッツとアントニー・ゲによる展示「Design with Japan」が行われる。二人はスイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団と在日スイス大使館が運営するレジデンスプログラム「Design with Japan」に参加し、多治見に3週間滞在。その後も現地の職人たちとオンラインでやりとりをしながら制作を行ってきた。



プロダクトデザイナーのノエラーニ・ルッツは〈Tajimi Custom Tiles〉とタッグを組み、老舗タイルメーカー「杉浦製陶」とプロダクトを開発。《Fleeting Landscapes (儚い風景)》は、スイスと日本の風景に共通するモチーフである雪に着想を得た詩的なタイルシリーズだ。
「《Fleeting Landscapes》は、雪の儚い特性を新しい素材に置き換えることで表現しています。温度や時間に耐える粘土は、形や質感の儚さを保つことができます。雪そのものを型取りした作品であれ、釉薬を通して観察を翻訳した作品であれ、このシリーズは雪の季節的・生態的な脆さや消えゆく存在を語り、変化を静かに思い起こさせます」(ノエラーニ・ルッツ)



プロダクト/インテリアデザイナーのアントニー・ゲは、テーブルウェアメーカーの「深山」と協働し、テーブルウェアのコレクション《Tea Set》を制作。“繊細で壊れやすいもの”と認識されがちな磁器に密度とボリュームを持たせ、より重厚で彫刻的な一面を引き出すことを試みた。その佇まいはミニマルでありながら、不思議と日常に馴染むもの。
「形状は意図的にシンプルにしていて、幾何学的かつミニマルに設計されています。建築的なボリュームを想起させながらも、親しみやすく、日常に取り入れやすいデザインです。直線と柔らかな曲線が交わり、静かでバランスの取れた緊張感を生み出します。この対比によって、それぞれの作品には独自のリズムと視覚的なダイナミズムが生まれ、日常空間の中でも自然に存在感を放ちます」(アントニー・ゲ)

